光の誕生日!
 

「ブン太と」
「蓮二の」
「お料理教室ー」
四天宝寺中男子テニス部部室。
丸井と柳、それから銀音の姿があった。
「今日は善哉を作るからな、しっかりメモ取っとけよ?」
「おん!」
「それにしても銀音が財前の誕生日に善哉を作ってプレゼントしたいと言い出すとは思わなかったな」
「やって光、善哉好きなんやもん」
「まあ良いけどさ、何で柳と俺なんだよ」
「丸井は料理上手いって聞いて、柳はな、幸村が作り方知っとるって教えてくれたから頼んだんや」
「あー…柳は和菓子とかのが好きだもんな」
「普通に洋菓子やスナック菓子も食べるがな。…さて、白石達に折角許可を貰ったんだ、早く始めよう」
柳が手元にあった小豆の袋を手に取りながら言うと丸井も鍋と砂糖を手に持った。
「そうだな。…ってか、これ俺らも食べて良いのか?」
「ああ、白石達の分も作ることになっているからな、その点は問題ない」
「柳ー小豆ってそのまんま食えるん?」
「止めろ、小豆は基本茹でて食べるものだ」
柳の持つ小豆の袋を見ながら銀音が聞くと、柳はさりげなく小豆の袋を高く持ちながら銀音を見た。
「それでは始めるぞ。丸井、まずはその鍋に小豆を入れて水を入れてくれ。……ああ、水は小豆の三倍程で頼む」
「よっしゃ、任せとけ!」
「銀音は向こうで白玉粉から白玉を作ってもらう。…出来るな?」
「おん!白玉やったらうちもやったことあるで!」
「(やはり作ったことはあるのか)…俺は善哉に添えるお新香を作る。分からなければ指示は出すから声を掛けてくれ」
それぞれを柳が役割分担をして調理を開始した。
「確か小豆は5分くらい強火で煮てザルに上げるんだったよな」
丸井が手慣れた様子で小豆を煮ながらザルと砂糖と塩を用意する。
5分経ちザルに小豆を上げると再び鍋に小豆と三倍程の水を入れて強火で煮始める。
煮立ってきたら今度は弱火にしてお玉でアクを取っていき、小豆が指で潰れるくらいに柔らかくなったら砂糖と塩を加えようと丸井は一旦お玉を置いた。
「丸井、砂糖の量だが控えめに頼む。俺の持っているデータだと財前は甘さ控えめなものが好きらしい」
「甘い方がぜってえ美味いのに勿体ねえ!………まあ財前の誕生日プレゼントだし仕方ねえかもしんねえけどさ」
柳の言葉を了承して丸井は砂糖を控えめに入れた。
あとはとろみがつくまで水が小豆に被さっているように足していく。
「よっしゃ、こっちは出来たぜ!」










少し離れた場所では銀音が白玉を作っていた。
「水はちょっとずつ加えて…柳ー、耳たぶの柔らかさやったっけ?」
「ああ、そうだ。それから丸めるときは親指の先から第一間接くらいまでの大きさで、中央は凹ませておけ」
「おん!」
銀音は言われたことを反芻しながら頷いた。
耳たぶを触りながら固さを確認しつつ水を加える作業を行い続けている。
それが出来ると銀音は白玉を丸めて、鍋で茹でる。
「丸井ー浮いてきたで!」
「お、そっちも終わったか。じゃあ浮いてきたのは掬って善哉に入れて冷やしとくぜ」
銀音が丸井に声を掛けると、丸井は丁度火を止めたところだった為すぐに反応した。
「あとは柳のお新香だけだな」










柳はというとお新香を作る為にキャベツと胡瓜、生姜を用意していた。
「キャベツは2p角くらいにザク切りに、胡瓜はスライサーで薄くスライスし、生姜はみじん切りに」
1oのズレもなく正確に切りながら柳は用意していく。
ボウルに切った野菜を移して塩を一摘み入れて暫く置き水分を絞り薄口醤油を垂らして完成させると小皿に取り分けた。
「………何だ、二人してこちらを見て」
「いや…柳、お新香作るの手慣れ過ぎてねえ?」
「これくらい当たり前だろう、さほど難しい料理でもない」
丸井の言葉にしれっと返してお新香を小皿に取り分ける作業を再開する。
「あとは財前が来るのを待つだけになったが……銀音、外が何故かとてつもなく騒がしい。ばれないように見てきてくれ」
「おんっスパイやな!」
目をキラキラ輝かせ銀音が部室から出て行くと二人の間に沈黙が走る。
「…柳」
「何だ」
「何で銀音を外にやったんだよ」
「嗚呼…所謂サプライズというものだ。財前は遠山姉弟を大切にしているみたいだからな。正直善哉がなくても銀音に祝われればそれで満足したと思うが」
「………え?つまり、俺らが大阪に来て善哉を作った意味は?」
「特にない。…強いて言うならば銀音が財前に何かプレゼントしたいと言ったから、だな」ノートを開きながら淡々と返した柳に丸井は頬が引き攣るのを感じた。



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