初戦の報告やーっ
 

関東大会初戦の日、幸村の病室に真田と柳、銀音が訪れていた。
「へえ。氷帝が青学に、ねえ……」
「せやで!青学の眼鏡の人凄かったんやで、あんなあんなっ腕痛そうなんにずーっと俺様と試合してたんや!」
楽しそうに幸村に話す銀音に幸村は相槌を打った。
「手塚と跡部のことだ、幸村」
「あ、やっぱり?青学の眼鏡って言われてもどちらか分からなかったけど…ありがとう真田」
にこりと笑む幸村、あれからすっかり心構えが変わったのか病室に行くと軽い筋トレを行っている。
「それにしても精市、筋トレをしていて大丈夫なのか?」
「あはは、蓮二は心配性だね。大丈夫だよ、筋トレといっても腕の筋肉が落ちないようにしているだけだから」
「ならば良いが…」
「精市、無理はするなよ」
「うん、分かってるよ。弦一郎も心配性だね」
柳の言葉のあとに真田が言うと幸村は面白そうに言った。
「銀音も今日は疲れたんじゃない?蓮二から聞いたけど、会場まで家から走って来たんだろう?」
「多分平気、や」
若干ウトウトしてきている銀音に幸村達は苦笑した。
いくら体力や力に自信があるとはいえ中一。
それに銀音は女の子なのだ、疲れが溜まっていても無理はない。
そんなことは知らない真田はたるんどる、と呟いていたが。
銀音が眠そうなのと病室だということに配慮した真田に柳が揶諭するように言う。
「弦一郎も銀音には甘いな」
「(本能で女の子だって理解してたりして)」
幸村がそう思ってるとは露知らず、真田が慌てだす。
「な…っ、別にそういう訳ではない」
「いつもの声より30%、声が小さいが。俺の勘違いか?」
フッ、と口元を緩ませる柳に真田は何も言えなくなり帽子を深く被った。
「んー…あんな、」
目を頻りに擦りながら起きていようとしている銀音が幸村に声を掛ける。
「ん? どうかした、銀音」
「皆、幸村が大好きやで…」
「え?」
「……仁王達が、言うとっ………」
「………寝ちゃったね」
幸村は銀音の頭をそっと撫でながら真田と柳を見た。
「このままでいると風邪を引く可能性がある。精市、毛布はこの部屋にあるか?」
「うーん…多分なかったと思うけど」
「む、ならば代わりにジャージを……」
「弦一郎、汗をかいたジャージを銀音に掛ける気なの?」
幸村のふふ、という微笑みに真田は目を逸らした。
「暫くは寝かせてあげたいし…蓮二、ちょっと毛布借りて来てもらっていいかな?」
「ああ、分かった」
ドアの近くにいた柳に幸村は頼むと柳はドアから病室を出て行った。
「…真田、調子はどう?」
「うむ、初戦は東京の銀華というところとの試合だった」
「銀華?ああ、昨年も関東に出ていた学校だっけ」
「うむ。ただ……」
「ただ?」
「…全員が腹痛で棄権をした」
「……腹痛って、全員が?」
「謎の食中毒だそうだ」
「…あ、ははっ何それ。何食べたら全員が食中毒になるんだろうね」
銀音が寝ているからと余り声を出さないように笑う幸村。
まだ病に倒れる前の幸村と変わらない姿に密かにホッとしつつ、真田は大会のことを報告する。
「───他の部員達は、明日に備え先に帰した」
「そっか、まずは初戦お疲れ様だね。…って言っても試合はなかったみたいだけど」
冗談っぽく言う幸村に礼を言うと真田は銀音に目をやった。
無意識のうちに幸村に擦り寄って丸まっている。
「んぅ…きん、ちゃ……」
寝言を呟く銀音を幸村は苦笑混じりに見つめる。
「3人も今日はお見舞いに来ないで休んだ方が良かったのに」
「すまない、幸村に報告したかったのでな」
「それは嬉しいけど、携帯があるんだから電話かメールでも良かっただろう?」
「弦一郎も俺も銀音も、勿論無理矢理帰したが他のレギュラー達だって精市に直接言いたいんだ」
ちょうど戻って来た柳の言葉に幸村は嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう、」
「いや、礼には及ばない。俺達は三強と呼ばれる前に友…親友だろう?」
「そうだぞ精市。何故礼を言う必要がある」
柳の言葉に、真田が同意する。
「親友に会いに来るのに理由なんて必要ないからな」
真田のズレた言葉に、幸村はやっぱり面白そうに笑んだ。
「ふふ、やっぱり弦一郎は面白いね」
「俺は至って真面目だが」
銀音に毛布を掛けた柳はそんな二人を微笑ましいものを見る目で見る。
「さて、そろそろ面会時間も終わるな。精市、また来る」
「うん二回戦も勝ち上がってね。いつも苦労を掛ける」
銀音を背負いながら柳が言うと幸村が手を振る。
「今度はあいつらも連れて来よう」
「ふふっ本当に?楽しみにしてるよ、弦一郎」
真田の言葉に幸村は楽しみだと頬を緩めた。



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