二人と観戦
 

「……銀音君、いえ銀音さん。女性だったんですね」
「まさかとは思うとったが…ホンマに女の子じゃったなんてのう」
びしょ濡れになった銀音を着替えさせたあと、二人は溜息をつきながら言った。
既に二人とも入れ代わりを止めて元の格好に戻っている。
「…遠山銀音、妙に女性らしい名前でしたからね」
「まあ、あの銀音ちゃんじゃき。行動が女の子っぽくなかったんも分からんかった原因じゃろうて」
「仁王ー柳生ー、あっちのコートを真田達見とるみたいやでー!」
二人が納得したように話していると空気を読む気がないのか、銀音が離れたところのコートを指差しながら告げる。
「真田君達がですか?」
「……ああ、あれは氷帝と青学の試合やのう」
「ひょうてい?」
仁王の説明に銀音は鸚鵡返しに聞き返す。
「ああ、銀音君は青学の方に知り合いがいたんでしたね」
呼び方を変えないことにしたのか柳生は君付けのまま話し掛ける。
「周助のことやな、うーん…友達やで!」
「友達、ですか…」
「おん!周助って凄いんやで、ぐあーっでズバーッでぎゅおおって」
「全く分かりませんが」
「ああ、そういうことなんか」
「分かったんですか、仁王君!?」
仁王の言葉に驚いたように見つめる柳生だが、当の仁王はプリ、と呟くのみで何も言わなかった。
「…あの眼鏡んやつ、凄いんやな。ずっと打ち合っとる、腕痛そうなんに」
「腕がですか?」
「おん、ちょっと庇っとるで?」
「…あの状況で、ずっとかのう。こりゃあ生半可な気持ちじゃ出来んことぜよ」
興味深そうに見つめながら仁王は言う。
「真田君が好敵手として見ている理由が分かる気がしますね」
「……柳生、お前さん好敵手くらいライバルって言いんしゃい。銀音ちゃんが理解しとらん」
「それは失礼しました、銀音君。ですが仁王君のその擬音程じゃありませんよ」
「……プリ」
「またそうやって…」
「あ、終わったみたいやで!」
柳生の言葉を遮るように銀音が声を上げた。
「試合は…跡部の勝ちか」
「ええ…ですが、手塚君も素晴らしかったですね。部長の鏡とでも言いましょうか、自らを犠牲にするなど中々出来ない行動ですよ」
「柳生、幸村より手塚が部長の方が良かったんか?」
「まさか。我々立海の部長は幸村君以外に有り得ませんよ」
「それ聞いて安心したぜよ」
仁王はいつもならばれないようにする溜息を普通にした。
安堵の溜息を。
「仁王君だってそうでしょう?」
「そうやのう…個性の強い俺らを纏められるんは幸村だけじゃけえ」
眼鏡を押し上げながら問う柳生に当たり前だと仁王は返す。
「二人は幸村んこと、大好きなんやな!」
ニコニコとした銀音がそんなことを言う。
「仁王と柳生だけやない、皆皆幸村が大好きなんやろ?」
「ええ、大切な仲間ですから」
「そうじゃのう。その為にも、優勝して幸村の帰りを待たんとな」
くしゃり、と銀音の頭を撫でながら仁王は言う。
「うちも幸村が大好きや!真田も柳も仁王も柳生も丸井もジャッカルも切原も…皆ごっつう好きやでっ」
銀音の言葉に柳生は微笑み、仁王はいつもの如くピヨ、と返すのだった。



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