痛いん嫌やっ
 

「いーやーやーっ」
「我が儘言わないで早く着替えてください!」
よっぽど着替えるのが嫌なのか銀音は逃げ回っていた。
「そんなに嫌がる銀音ちゃんを追い掛け回すなんて…柳生も紳士失格やのう」
「そんな人聞きの悪いこと言っていないで仁王君も手伝ってください!」
「えー…柳生が虐めるー」
「仁王君!」
くあ、と欠伸をしながら仁王は隠し持っていたらしいシャボン玉を吹いてやる気が全くない。
「嫌やーっうちは金ちゃんとお揃いがええんや!」
「そんなこと言ってる場合じゃ…銀音君!?」
「お、ぶつかった」
ドン、と近くにあった木にぶつかり銀音は尻餅をついた。
「大丈夫ですか、銀音君」
「っ、いたな、いもん…」
若干泣き目になりかけている目で言われても説得力がない言葉に、柳生の眼鏡が光る。
「何処が、ですか。触った感じではコブになりそうですし…冷やした方がいいですね」
テキパキと軽く触って様子を見た柳生は銀音の身体の後ろに腕を通した。
「すいません、暫く我慢していてくださいね」
そう告げ、銀音のことをお姫様だっこで持ち上げる。
「…――!」
目の前の光景に仁王は唖然としていた。
「柳生が…銀音ちゃんをお姫様だっこ、しとる…!ゆ、夢ナリ。何かの間違いナリ」
「何を現実逃避しているんですか、仁王君。早く動きたまえ」
「……プリ」
「う、ああ…頭ガツンて、言うた…」
えぐえぐと泣きながら銀音が言う。
「余程強くぶつけたよう、ですね…とにかく何処か座れそうな場所にいかなくてはなりませんね」
「柳生、銀音ちゃんの服の裾めくれてるんじゃけど」
「…仁王君、直してくれませんか」
「……おおっと、手が滑ったナリー」
棒読みで仁王が言う。
服の裾を直そうと動かした手を柳生の眼鏡へとやり外す。
「仁王君!…全く」
「柳生がお姫様だっことか何かイメージ湧かないから変装ナリー」
何処に隠し持っていたのか詐欺用のウィッグを取り出し柳生に銀のウィッグを、自分には茶色のウィッグを付ける。
「パパッと雅治のイリュージョン〜」
茶化した様子で呟き仁王は自分に柳生の眼鏡を掛け、口元にあるホクロをコンシーラーで消すと柳生の口元にホクロを専用の道具で書いていく。
「…ほれ、完成じゃ」
「仁王君…口調に気をつけてください」
「そちらこそ敬語になっていますよ」
「…それは失礼したぜよ」
声色を変えて話す二人に驚き痛みを忘れたのか銀音は目を見開きながら二人を見比べる。
「ふ、二人が変身した…もしかして、金ちゃんが言っとった忍者なんか!?」
「違います」
「銀音ちゃん、忍者はいないぜよ」
「そっか、忍者なんか」
「駄目ですね、聞いてません」
一人納得した顔で頷く銀音に二人は顔を見合わせた。
「……銀音君、忍者は私達じゃなくて他の場所にいますよ」
仁王が言うと、銀音は首を傾げた。
「えー、でも仁王と柳生は変身しとるやん」
「詐欺じゃ」
「ぺてん…て何や?」
「…プリッ」
「ぷりー」
「仁王君、私の格好で言うのは止めたまえ」
「柳生こそ敬語になっているじゃないですか」
「うー…よう分からん」
柳生は銀音を下ろし、周りを見る。
「銀音ちゃんのたんこぶ冷やさんとな」
「でしたら、そこにある水道を使って…」
二人が相談していると銀音は水道の水を出して遊び出す。
「あ、二人とも虹出来たで!」
水で遊んでいた銀音の言葉に二人が視線をやると、上から下までびしょ濡れになって虹を作っている銀音がいた。
「…銀音ちゃん、服脱いで着替えるぜよ」



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