姉ちゃんと会ったで!
 

「ほあー…凄いなあ。波動球やって!」
「これだけの強力なショットは乱用出来ないでしょうが、ここぞというときに使えば流れを自分のものに出来るでしょうね」
「…けど、あれなら打ち返せるぜよ」
不動峰の試合を見にやって来た3人はショットの分析をしていた。
「ええ、真田君の火の方が重いでしょう」
「あ、あのす…すぽっつも凄いで!」
「銀音ちゃん、それはスポットじゃ」
仁王は訂正を入れ、じっくりと伊武のショットを見始めた。
「…上下の回転を交互にやることで一時的に腕の筋肉へ負担を掛けて、神経への伝達を麻痺させとるんか」
こりゃあ素早く持ち替えて打たんといけんのう。
小さく呟いた仁王の言葉に柳生が訂正を入れる。
「それも一つの方法ですが打たせないという手段も……」
「いや、それよかスポットが通じんと思わせた方がよか」
二人の会話に飽きてきた銀音はキョロキョロと辺りを見回した。
「…あ!」
視界に入った女の子のところに駆け寄り、銀音は声を掛けた。
「姉ちゃん、この辺りに自動販売機何処にあるか知らへん?」
「…あ、私?えーと確か向こうの方にあったわよ」
「おーきに、姉ちゃん!」
「あ、ちょっと待って!分かりづらいところにあるから案内するわ」
「おん!」
女の子に案内され、銀音は自動販売機の前に来る。
「姉ちゃん、何がええ?」
小銭を入れて、銀音は尋ねた。
「え、ポンタかな」
「ポンタな。……はい、連れて来てもろうたお礼や!」
「ありがとう、えーと…」
「あ、遠山銀音言います、よろしゅう!」
「銀音君ね。私は橘杏っていうの。気軽に呼んでね」
ウインクをしながら杏は言った。
「おん、杏姉ちゃん!」
「銀音君、とりあえず戻りながら話そっか」
「せやな。あ、ちょお待ってて!」
自分の分を買い忘れていたことに気づいた銀音は自動販売機に小銭を入れてスポーツドリンクを買う。
「…ん、じゃあ杏姉ちゃん行くで!」
「ええ、」
元気よくはしゃぐ銀音を微笑ましそうに見つめながら杏は歩く。
「銀音君は…立海?」
「おん、せやで!杏姉ちゃんは何処の学校なん?」
「私は不動峰よ」
「ふどうみね…今試合しとるとこ?」
「ええ、そうよ。このまま勝ち進めば立海と当たるからそのときはよろしくね」
「おんっ!」
銀音と杏はコートに着くと別れた。
「柳生ーっ仁王ーっ、…っぷぁ」
大きな声を出しながら二人のいた方へと掛けだそうとしたとき、銀音は通り掛かった他校の生徒にぶつかった。
その拍子に相手が持っていた水が頭から掛かって頭から服まで濡れた。
「チッ…気をつけろ!」
そのまま相手は謝りもせず立ち去り、ポカンとした様子の銀音だけが取り残された。
「……銀音ちゃん!」
仁王がその様子を見ていたのか近寄ってきてタオルで頭を拭く。
「銀音君、大丈夫ですか?とりあえず私のジャージを貸すので何処か端に行って着替えましょう」
柳生も自分のジャージを脱いで銀音へと差し出す。
「平気やもん、」
頭を拭かれている為か声がタオルに吸収されてくぐもった声で返事をする銀音。
「駄目じゃ、いくら暖かいからってそのまんまでおったら風邪引くぜよ」
「そうですよ、試合の方もキリよく終わりましたし移動しましょう」
仁王と柳生は銀音の手を引き、端の方へと歩いた。



前へ 次へ

 
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -