遅刻やー遅刻っ
 

関東大会当日。
銀音は慌ただしく準備をしていた。
「何で目覚まし壊れてんのやーっ」
勿論寝ぼけて壁に投げつけたのが原因だがそんなことは全く覚えていない銀音。
「あ、真田に電話!」
電話を掛けながら靴を履く。
『む、銀音か!今何処におる!』
「すまん、真田!家やからっ、えーと…30分後に会場に着くようにすんで!」
『おい、』
置いておいたラケットを入れたリュックサックをしょい込むと銀音は走り出した。
「確か会場は東京やったから…こっちやな!」
道にある標識を確認しながら銀音は全速力で駆ける。






















「弦一郎、銀音は何と?」
「……今は家だから会場に30分後に行く、と」
「ふむ…確か銀音の家は神奈川にあり、東京からは離れた地域の筈だ。どう考えても30分後に着くのは物理的に不可能だな」
「やはりか」
「副部長、柳先輩、銀音はまだ来てないんスか?」
切原が真田と柳に近寄り尋ねる。
「ああ、つい先程電話で連絡が来た。今は家にいるらしいな」
「はあ!?だって銀音の家って神奈川っスよね!」
切原が驚いた声で言う。
「の筈だが」
「じゃあ開会式にはぜってえ間に合いませんね」
「まあ、そうなるな……」
「ちぇっつまんねえの」
面白くなさそうに切原は呟いた。
「皆さん、こちらにいたんですね」
「柳生か、何かあったのか?」
「いえ、そういう訳ではないのですが…仁王君の姿が見当たらなかったので少々探しておりまして」
「仁王か?……そうだな、先程自動販売機の方へと行くのを見掛けたが」
「そうでしたか、それでは見て来ますね」
にこやかに柳生は言い、歩き去った。
「お、まだ銀音は来てねえのかよぃ」
「まあまだ集合時間にはなってねえしな……」
丸井の言葉にジャッカルはフォローを入れた。
「んで、銀音はどうしたんだよ」
「まだ来てないらしいっス」
「……はあ!?もう開会式始まるじゃねえか!」
丸井がそう叫ぶと、周りの視線が集まる。
「……くそっ」
仕方ないに静かになった丸井はガムを膨らませた。
「仕方がない、開会式に出るぞ」
立海レギュラーは仕方なしに開会式を行う中央コートに入って行った。









「っどりゃあ!」
その頃銀音は既に東京の県境に来ていた。
「どっち行けばええんやろ…」
ポタポタと垂れる汗をタオルで拭い、息をつく。
「……っしゃ!こっちや!」
匂いを嗅ぐように鼻を鳴らすと、銀音はまた走り出した。













「ったー!着いたでー!」
開会式が終わり、学校毎に移動を始める中銀音はぴょんぴょんと跳ねながら喜んでいた。
「んー、と…立海は…」
場所が分からない為近くにあった木に登ろうと足を掛けたところで声が掛かった。
「あーっ遠山君でヤンスーっ!」
「……誰や?」
「浦山しい太でヤンス。さっきから先輩達が待ってるでヤンスよ」
「ホンマっ!?何処におるん?」
浦山の言葉に目を輝かせて銀音は飛びつく。
「わっ、ビックリするでヤンス〜」
「浦山何処に行けばええー?」
「えー、と…3番コートで集合だった筈でヤンスよ」
「3番…あっちやな!早う行くでーっ」
浦山を引きずりながら銀音は3番コートへと走り出したのだった。



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