初めてのゲーセンやでっ
 

「光ー!」
「何や銀音」
「ゲーセン行ってみたい!」
「…お前には早過ぎるとちゃうんか?」
遠山銀音、小学6年生。
まだ大阪にいた頃の日常の一コマである。
「そんなことないで!うちやって6年生やし」
「アホちゃうか、お前はその6年の中で1番年下やないか」
「ちゃうもん、金ちゃんが1番下やもん」
「変わらんわ、」
ベシッと頭を叩き財前は溜息をついた。
言い出したら聞かないというのは長い付き合いで分かっている財前ではあるが、何しろこれから部活だ。
サボる訳にもいかず、さてどうしようかと考える。
「……しゃーない、その代わりに善哉で手を打ったるわ」
しかし行ったら行ったで色々と濃い先輩達と部活をすることになると思い、財前はすぐさま自分によく構ってくるヘタレな先輩へとメールを送った。
『謙也さん、今日の部活はゴンタクレその1に捕まったんで行かへんって部長に伝えといてください』
送り終え、すぐさま返ってきた返事を無視して財前はリュックを降ろした。
「で、何処のゲーセン行くんや」
「ぬいぐるみが取れるとこがええ」
「ぬいぐるみっちゅーと…何処でも取れるやろ」
「えーそうなんか?」
「ホンマに行ったことないんやな……」
呆れた口調で呟き、財前は歩き始めた。
「ほら、さっさと行くで」
「おん!」
後ろを振り向かずに歩き始めた財前に着いて行く銀音。
もうすっかり部活のことなど頭の端に追いやっていた。

















「……で、金太郎も一緒なんか」
「えー、やって二人で遊ぶんやろ?ワイも遊びたい!」
「別にええけど騒いだら置いてく」
暫く歩くと合流した金太郎に溜息混じりに釘を刺して財前はゲーセンの前に立ち止まった。
「着いたで、さっさとやりたいことしてき」
「光は?どないすんのや」
「俺は此処で待っとる」
「嫌やーっ絶対光も一緒や!」
「せやせやー!光も一緒やないとつまらんやんか!」
二人がぎゃあぎゃあ騒ぎ、周りの視線が自分達に向いたのを見て仕方なしに財前はゲーセンへと入った。























「うー…何で勝てへんのや!」
「そりゃあボタン全押ししてたら勝てへんやろ」
面白くなさそうに銀音が言うと財前ははあ、と溜息をつきながら言った。
正直リズム感が重要になってくる音ゲーで負ける気がしない財前からしてみれば銀音の様子の方が不思議である。
「……あ!ぬいぐるみは何処で取れるん?」
「ぬいぐるみはそこのUFOキャッチャーで取れるやろ」
いきなり機嫌が良くなった銀音に引きずられ、UFOキャッチャーの前までやって来た財前。
「あれ取れるんかっ?」
目を輝かせて指差す先にいるのはウサギのリュック。
「…ぬいぐるみはええんか、」
「え?やってあれやったらずっと持ってられるやん!」
「……………、」
銀音の言葉に微妙な顔をして財前はUFOキャッチャーを見つめた。
「光ーどうやるん?」
ちょいちょいと服の裾を引っ張る銀音にチョップを入れて財前はUFOキャッチャーの前に立った。
「どれがええんや」
「うーん…あのピンクがええ」
「ん」
お金を入れて手慣れた手つきで操作を始める財前。
ピンクのウサギのリュックのしょう部分を引っ掛けて落とすと銀音に投げて渡す。
「それでええんやろ」
「おおきにっ光!」
嬉しそうに銀音はそのリュックを抱きしめて笑った。
「あーっ銀音ずっこいわ!ワイも何か取ってーな光ーっ!」
「あー煩いわ、金太郎」
財前は金太郎の頭を軽く叩き、歩き始める。
「これでええか、」
財前はふと目に止まった同じ系列らしいリュックを取り金太郎に投げた。
「うわっ!…ワイもリュックやー!光、おーきに!」
ぴょんぴょんと跳ねる金太郎に財前は気怠そうに返事をした。



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