天下の立海っちゅーんに行ったるで!
 

「なー、金ちゃん。うちな、立海行こう思っとるんや」
「えー何でや!わいと一緒に四天王寺行くゆーてたのに」
「金ちゃん、うち…試したいねん。自分のテニスを…それに立海のテニス部ってめっちゃ強いゆーて有名やし!」
大阪にある、自宅で騒ぐ二人。
彼らは双子の姉弟だった。
遠山金太郎。遠山銀音。
お互い生まれる前から一緒だっ為、小さい時から何をするにも一緒だった。
片方が何かを始めればもう片方もそれを始めた。
テニスも同じである。
プレースタイルも酷似している二人は、いつも競い合い楽しくテニスをしていた。
「嫌や嫌や!わいと一緒に四天宝寺行くんや!」
「んなこと言ったって、うちはもう入学手続き取ったさかい…無茶言わんといてな!」
駄々をこねるように反対する金太郎に困り顔をする銀音。
「やって…立海って近いん?わいが部活終わったあとに行ける?」
「………えーと、」
キラキラとした目に視線を逸らす銀音。
そんな様子に金太郎は徐々に表情を曇らせた。
「…遠いん?立海って」
「…まあ、」
「嫌やー!銀音と学校行けへんのも嫌なんに、会えなくなるんはもっと嫌や!」
絶対通さないと言わんばかりに目の前に立つ金太郎に困り顔で銀音は言った。
「金ちゃん、実は黙っとこ思うとったんやけど…」
「なんや…?」
「うちな、金ちゃんと戦ってみたいねん。それぞれ離れて自分のテニスして、本気でやってみたいんや」
「銀音…………」
「やからお願いや。うちが立海行くの許したって?」
「…おん、分かった」
こくりと頷いた金太郎に銀音はほっとした顔になった。
「そんでな、明日にはもう行くねん。そうしないと入学式に間に合わんさかい」
「なんやて!?ちょお待っとって!」
バタバタと部屋へと踵を返した金太郎を見ながら、銀音は再び荷造りをする。
今まで使っていた部屋ともこれでお別れだ。
「今までおーきに」
名残惜しむように部屋を見渡していると慌てた様子で金太郎が戻ってきた。
「これ、持ってってーな!」
ばさっと手渡されたのは金太郎が使っている豹柄のタンクトップだった。
「金ちゃん、これ……」
「それ、わいやと思って大事に使ってほしいんや。離れてても姉弟っちゅー証拠に!」
「金ちゃん………やったらうちもこれ」
感動して涙が零れそうになったがぐっと堪えて銀音は両手に付けていたリストバンドを片方を外して付けた。
「これ、銀音が大切にしとるんやろ?ええん?」
「ええんや。金ちゃんとお揃い、ずっと姉弟やっちゅー証や!」
ぎゅっと抱きしめ合って、二人は笑顔で顔を見つめ合った。











「それじゃあ、全国大会でまた会おうな。金ちゃん」
「おん!絶対テニスするんやで!」
翌日早朝。銀音は新幹線に乗る為に駅に来ていた。
勿論金太郎も見送りに来ている。
「手紙書くからな、銀音!」
「おん、」
手をぶんぶん振る金太郎に見送られて銀音は大阪を旅立った。
「どんな奴がおるんやろ、立海…楽しみやなあ」
窓の外を流れる風景を見ながら、銀音はそう呟いた。



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