切原と買い出しやで!
 

「切原ーっ!こないだ練習試合来んかったから今から走り込みと買い出しやって!」
「うっわマジかよ!」
「大マジだ。さっさと行ってこんか!」
「げっ……副部長」
「銀音、赤也がちゃんとやっているか着いて行って確認してくれ」
「分かったで、柳!」
「柳先輩まで!?」
二人の言葉に切原は溜息をついた。
「何で買い出しまで…」
「嫌なん?」
「嫌に決まってるだろ。だってこんなの新入部員の仕事だろ」
「新入部員?」
「銀音みたいな部活に入ったばっかのやつ」
面白くなさそうな顔で切原が言う。
「切原、ついでに自分のモンも買うん?」
「そうだな、ここんとこグリップテープも新しいの買ってないし、ラケットやシューズも新型見てないし」
気分を切り替えて切原が言う。
「うちもシューズ見るで!」
「あー…何か見るからにボロボロだよな、それ」
銀音の足元を見て、切原は言う。
「金ちゃんとお揃いやから、なかなか新しいん買いたくないんや」
「でもそんなになってくっと怪我すんだろ」
「怪我…ひざ小僧擦りむくくらいしかしたことないで!」
「この間、舌噛んだとか言ってたのは何処のどいつだっけ?」
「……うちや」
そんな会話をしながら二人は走り込みをする。
未だに息を切らしていない二人に、近くを走っている1年生がありえないものを見た、といった顔でそちらを向く。
「鍛え方が違うっての」
切原はそう言って、走るスピードを上げた。
「切原!何周するん?」
「あ、……そういや聞いてなかった」
ヤベ、と呟き切原はコートを見た。
「もう始まってるし……」
「どないしたん、切原?」
「まあ10周すりゃいっか。銀音、後6周な」
「おんっ!」
切原の言葉に銀音が頷いた。
二人が走り終わり、部室に一旦戻ると買い出すもののメモが置いてあった。
「何々…ドリンクの粉にタオル、それから……」
「あ、切原ーこっちにもメモあるで!」
「え、いや…このメモで全部だと思うんだけど」
銀音が見つけたメモを受け取りながら切原は言う。
「ガム、銘柄…プリッ…ってこれ、丸井先輩と仁王先輩じゃんか」
ガムはともかくプリッて何だよプリッて!と切原がメモを見つめる。
「切原ー行かないと部活終わってまうで」
銀音の催促に、切原は時計を見てヤベ、と呟きラケットバックを肩に掛けた。
「銀音、早く行くぜ」
「おん!」
リュックを背負い銀音が元気よく頷いた。
「ここらで近いのは、少し先の商店街にあるとこだな」
「こっちやと、うちの家の近くやな」
切原が指差した方を見て、銀音が言う。
「へえ、どの辺だよ」
「んっとなー…ちょお遠いとこに見えるマンション」
「もしかして、あの新しく出来たとこか?」
「せやで」
「マジかよ!?それ、結構金掛かってるとこだろ」
「そうなん?」
よく分かっていない銀音に、切原は溜息をついた。
「……ま、良いけどさ」
「あ、着いたで切原!」
言われた通りのものを買い、二人は店を出た。
「銀音はシューズ買ったんだな」
「おんっ、このシリーズのシューズ使いやすいで」
「へー…今度試してみっかな」
二人が立海への道を戻っていると、声を掛けられた。
「お前、立海の切原だよな?」
「そうだけど…アンタら誰」
「俺らは次の試合で立海と当たる里中だ」
ガラの悪い男がニヤニヤしながら言う。
「へー……アンタらが、ね。まっどーでもいいや。どうせアンタらじゃ勝てねえだろうし」
「あんだと、この……っ」
相手を馬鹿にするような口調で挑発した切原。
それに乗っかり、一人が暴れ出す。
「おっと、……何すんだよ」
切原がジロリと睨む。
「うっせー!人にボールぶつけなきゃ勝てねえ癖に生意気言ってんなよ!」
「あ?」
切原とガラの悪い男は睨み合う。
「切原、早うせんと真田に怒られんで」
その場の空気が悪くなったのを見て、銀音が切原の服の裾を引っ張る。
「え、ああ…わりい」
「何だこいつ?目茶苦茶ちっせー」
「こんなのが部活に入ってんなら立海って大した学校じゃねーな」
ゲラゲラと笑う相手に切原は怒る。
「弱い癖に絡まないでくんない?俺達急いでんの」
目が充血してきたのを感じ、切原は目を細める。
「ひっ……」
「ヤバいぜ、い、行こう」
そんな様子に危機を感じた相手はさっさと立ち去った。
「切原大丈夫なん?」
「平気、…銀音は今は近寄んない方がいいぜ」
赤く充血した目を銀音に見せないように顔を背けながら切原は言う。
「……切原!」
バッと銀音は切原の前に回り込んで手を握る。
「早うせんと、もう部活終わってまうで!」
「え、ちょ……あんま引っ張んなよ!」
充血した目を見ても怖がりもしない銀音にホッとしつつ、何処か納得した気分になった切原。
二人は立海まで走った。




















「遅かったな、何かあったのか?」
「ちょっと、っスよ」
「そうか、……弦一郎が大層怒っていた。早めに謝っておけ」
「げっマジっスか!?」
「ああ、それから銀音。パワーリストに重りを2キロ追加だ」
「今は5キロやから、7キロやな!」
「まだまだ増やしていくからそのつもりでいろ」
柳は伝えて、部室へと入っていった。
「……銀音、真田副部長に謝っからな」
正直行きたくないと思いながら切原が言った。
「おん、」



前へ 次へ

 
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -