雨の日は筋トレやって!
 

「うわーっ、何やのこれ!」
「それはランニングマシーンだ」
「ランニングマシーン?あ、テレビで見たことあるで!」
雨が降り、部活が筋トレになった立海。
今年初めて、トレーニングルームに入った銀音(他の1年生は体力作りでランニング)はおおー!と歓声を上げた。
「今日は筋トレだからな。こういった器具を使って練習を行う」
「初めて見るで、」
「そうだな。中学校でこれだけのものが揃っているところも珍しい」
「そうなん?」
「それだけ、我等立海大附属男子テニス部は優遇されているということだ」
「ゆうぐう?」
「ああ、勝つことで立海の名は広がっていく。勝つ為には環境も必要不可欠だ。…そういった面をカバーするのが学校側だからな」
柳はそう言ってノートを開く。
「蓮二、今日のメニューだが……」
「ああ、すまない弦一郎。今行く」
真田に呼ばれ、柳はそちらに歩いて行った。
「あ、行ってもうた」
「銀音、お前さ確か体力目茶苦茶あったよな?」
切原が話し掛けて来た。
「? 金ちゃんと同じくらいやで」
「いや、金ちゃんとやらは知らねえけど。…ま、練習大変になっちまうかもな」
「練習が大変に?……はっ、まさか!」
何かに思い当たったのか声を上げる銀音。
「重力使いやな!金ちゃんが言うとったで、重力操って人をぺしゃんこにしてまうて」
「は?」
「立海て怖いとこやなあ…」
「いやいや、ちょい待てよ」
ガタガタ震える銀音に切原が訂正を入れる。
「先輩達は別に重力使いなんかじゃないぜ」
「へ?」
「俺が言いたかったのは、練習量が増やされるかもってことだよ」
切原は苦笑混じりに言った。
「ま、三強の3人は別格だからな。化物みたいに強いし」
ふざけた口調で言う切原の後ろから声が掛かる。
「ほう……化物みたいにか」
「げっ…真田副部長!?」
「二人とも、部活中に何をやっておる!たるんどるぞ!」
切原の頬を平手打ちした真田は銀音の方を向いた。
「銀音、部活中…まして練習中に喋るなど言語道断だ。……歯を食いしばれ」
「…おん、」
銀音は言われた通りに歯を食いしばる。
「たわけが!」
バチンと大きな音を発て、銀音は壁際まで吹っ飛ばされる。
「っ……たぁ。ごっつ強いなあ」
頬を赤く腫らしながら、銀音は立ち上がった。
「真田、次から気を付けるな」
「うむ。……赤也」
「すんませんした、」
二人が謝り、その場から真田が去った。
「……、とりあえず練習しようぜ」
「おん!」
殴られたことを気にも止めず、銀音はいつも通りの笑顔で頷きメニューを確認した。
「ランニングマシーン30分×2と…」
ランニングマシーンの前に来て、銀音は機械のセットをする。
「どれ押すんやろ?」
初めて見る機械に銀音は試行錯誤しながら指定されているボタンを押し、走り出す。
「おおっ!凄いな、ランニングマシーンて!」
始終興奮したように声を出しながら、銀音は30分走り続けた。
「次は……」
着々とメニューをこなして行く。
「よっしゃ、終わったでー!」
まだまだ元気が有り余った状態の銀音は周りを見渡す。
大体のレギュラーは息も殆ど乱していない。
「あ、仁王ー!」
「、…銀音ちゃんか…」
少しだけ息が乱れている仁王の元に銀音は向かう。
「大丈夫なん?息切れとる」
隣に行くと、銀音はいつもよりは軽めに抱き着いた。
「大丈夫じゃき、すぐに元通りやけえの」「そうなん?」
「プリッ」
「ぷりっ!」
擬音をたどたどしい口調で返す銀音。
「銀音ちゃん、早く慣れんしゃい」
「が、頑張るで…」
ぴよぴよ!と繰り返し言う銀音。
「ぴよぴっ……」
「銀音ちゃん?」
「したかんら…」
思い切り噛んだのか、銀音は涙目になりながら言う。
「血ぃ出とらんか?」
「わかんらい」
口の中を覗こうと仁王が顔を近づける。
「仁王君、何をしてるんですか」
「お、柳生。調度よか、こっち来て手伝いんしゃい」
「手伝う、とは?」
「銀音ちゃんが舌噛んだみたいでな、血が出とらんか確かめとるんじゃ」
「そうでしたか。大丈夫ですか、銀音君?」
今冷やすものを取って来ます、と柳生はトレーニングルームを出て行った。
「銀音ちゃん、見せてくれんか?」
「おん…」
口を開けた銀音。
そんな銀音の口を仁王が覗く。
「あー…ちょっと血が出とるな」
暫く痛いぜよと呟いた。
「暫くは熱いもんは食べんようにな」
「わかった」
「仁王君、冷たい水を持って来ました」
「お、サンキューやーぎゅ」
「いえ、…それから私の名前は普通に呼んで下さい」
「プリッ」
ごまかした仁王に苦笑し、柳生は銀音にペットボトルを渡した。
「銀音君、これを口に含んで冷やして下さいね」
「おん」
言われた通りに銀音は水を口に含む。
「真田君には、私から言っておきます」
「スマンの、柳生」
柳生は真田のところに向かって行った。
「銀音ちゃん、平気か?」
「…もう平気やで!」
「そうか、ならとりあえず水は置いときんしゃい。零れそうになっとるけえ」
「おんっ!」
元気よく頷き、銀音はペットボトルの蓋を閉めて端に置いた。
「まだぷりっ、て練習した方がええ?」
「…いや、もういいぜよ。また銀音ちゃんが舌を噛みそうやからの」
仁王はそう言って床に座る。
「仁王、座っとったら真田に怒られんで?」
「平気じゃ。今は真田は丸井の方にいるからの」
「ふーん。じゃあうちも座んで」
横に体育座りをして、銀音は笑った。
「…なあ、仁王」
「何じゃ銀音ちゃん」
「テニス、楽しい?」
「……さあの」
銀音の言葉に、仁王はぼかして答える。
「うちはな、めっちゃ楽しいで!ごっつ強うやつと戦うんは楽しいし、笑って出来るテニスが大好きや!」
「そうか、良かったの」
「おんっ!勝ち負けより、うちはそっちのが大切やと思う」
「……銀音ちゃん、それは他のレギュラーの前で言ったらいかんぜよ」
「? 何でや」
仁王の言葉に銀音は首を傾げた。
「秘密じゃ。特に真田の前で今のことを言ったらいかんなりよ」
「よう分からんけど分かった」
「ええ子じゃの」
銀音の頭を撫でながら仁王は言った。
「…いつか、銀音ちゃんも勝ち負けを重視するときが来るのかも知れんの」
「仁王何か言ったん?」
「プピーナ」
「ぷぴーな!」



前へ 次へ

 
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -