やって中学生やもん
 

地区予選。
銀音は約束通り、青学の応援に来ていた。
「仁王がくれたカツラ付けたけど、何で付けるんやろ?」
全く理由が分からない銀音は首を傾げる。
「お、おったおった」
青学のメンバーを見つけて、銀音は物陰から覗いた。
「うおーちっこいのがおる」
同じくらいや!と瞬きする。
「あ、しもた。今は関西弁駄目だった」
訛っているものの、標準語に直す。
「周助、頑張って」
小声でそう呟いた。

















「うはー…すぐ終わってもうた」
集中してみていた銀音には試合が早く終わったように感じていた。
「あ、せや!せっかく来たんやから打ってこ」
練習用のコートに行き、壁打ちを始める。
「タコ焼きお好み食っべ放題!」
自分で作った歌を歌いながら銀音はテンポよくボールを打つ。
「絶対負けへんやってうちは」
そこでボールを高く上げる。
「姉ちゃんやから!」
スマッシュを決め、銀音はボールを打つのを止めた。
「ふう…やっぱ自分のプレースタイルないと駄目か?」
ただただボールを追い掛けて返すテニスをしてきた銀音にとって、立海という場所は強い人が沢山いる場所だった。
確固としたスタイルをそれぞれ持っている(仁王は別として)彼等に、正面から挑んでも勝てない。
そう本能で感じ取った銀音は少しだけそういったものを考えるようになった。
「やっぱ、基礎をもっとやったらええんかな?」
ブン、とラケットを素振りして考えた。
「…うーん、よう分からんな。ええわ、そんうち分かるやろ」
難しいことを考えるのが苦手な銀音はラケットをリュックに仕舞って家への道を歩き始めた。
「きゃっ!」
「ん?あ、大丈夫か自分?」
目の前で転んだお下げの女の子に銀音は近寄った。
「ご、ごめんなさい…」
「ううん、それより怪我ないん?」
膝を擦りむいているのを確認した銀音はウサギのポシェットから絆創膏を出して、ぐいっと女の子――竜崎桜乃を引っ張った。
「あっちに水道あったから行くよ」
「はっはい!」
水道に着き、水で傷口を洗い絆創膏を付ける。
「あんま走ってるとまたコケんよ」
「次から気を付けます」
「そか。あ、うちは銀音や。自分は?」
「竜崎桜乃です。あの、絆創膏ありがとうございました」
「ええて。うちが勝手にやったことだから」
銀音はニッと笑い、リュックをしょい直した。
「それじゃ、うちもう行かないと行けんから。またな、竜崎!」
「はい!銀音ちゃん」
パタパタと駆けていく銀音を見送り、桜乃は呟いた。
「かっこいいな…」















「銀音、遅かったな」
「すまん真田、ついつい夢中になってもうて」
「いや、今から練習を始めるところだ。次から気をつけろ」
「おんっ!」
学校のコートに集まっている立海に合流して、銀音は練習を始める。
少しだけ、プレースタイルを意識して。
「うー…切原あ」
「何だよ」
近くで順番を待っている切原に話し掛けた。
「プレースタイル、って…何やの?」
「プレースタイル?それなら…」
「ちゃう。うちのや」
「銀音の?強いて言うなら、オールラウンダーもしくはアグレッシブベースライナーか…」
「?」
「分かってねえって顔してるぜ」
ポンと頭を撫で、切原が言う。
「ま、あんま気にしない方が良い試合出来るからよ」
順番が来た切原はコートに入って行った。
「おん、……せやな」
俯き、銀音は頷いた。
「よっ銀音」
「丸井…」
「何だよ、元気ねえなー。…よし、じゃあ今日は奢ってやるぜ!……ジャッカルがな!」
「俺かよっ!」
少し離れた場所にいるジャッカルがツッコミを入れた。
「別に良いだろぃ?」
「よくねえからな」
「豪華にしろよ」
「話聞けよっ」
ぎゃあぎゃあ騒ぐ二人に鉄拳が落ちた。
「丸井、ジャッカル!練習中だ、何をやっておる!」
「げ、マズ…」
「たるんどる!」
そんな様子を見ていたら、銀音は不意に可笑しくなって大声で笑った。
「どうした、銀音」
「別にーっただ笑いたくなっただけや」
笑顔で言い、銀音はラケットをしっかりと握りしめた。



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