仁王と詐欺や!
 

「金ちゃん、やっぱ強いな!」
『そやろっ!?そんで白石が……』
銀音の日課は金太郎との電話だ。
部活が終わり、帰って来てご飯やお風呂を済ませると電話をする。
基本的に8時から9時の間だけと決めている。
金太郎も銀音と電話をする為に携帯を買って貰っているので通話料は無料。
しかし、まだまだ子供体質な二人は遅くまで起きることが出来ない。
どちらかの部活が長引いたりすると、電話が出来ないときもある。
それでも二人は毎日電話を掛け合う。
大好きな片割れの声を聞く為に。
「あ、そろそろ時間やな…」
『ホンマや!まだ電話したい…』
金太郎の言葉に銀音は見えないのが分かっていながら頷いた。
「せやな。…明日、また電話しよな!」
『おんっ、絶対やで銀音!』
「当たり前や!ほな、お休み金ちゃん」
『お休み銀音』
電話を切り、銀音は布団に潜る。
「金ちゃん、楽しそうで良かったわ…」
安心した声で銀音は呟いた。
「明日は仁王が詐欺教えてくれるゆうてたな…」
楽しみだと銀音は思い、目を閉じた。
















「仁王ーっ!」
「銀音君、仁王君は向こうにいますよ」
「えーあれは柳生やろ?」
朝一番に柳生に飛びつき、銀音は言う。
「ですから…」
「匂いが仁王やもん」
「……銀音ちゃん、匂いでは普通分からんぜよ」
「?」
カツラを外しながら仁王が言うが、銀音は首を傾げた。
「まあええか。…じゃあ約束通り詐欺を教えちゃる」
その言葉に近くにいたジャッカルが驚きの表情でこちらを見た。
「おい仁王。銀音に何教えようとしてんだ」
「ジャッカル、よう聞きんしゃい。銀音ちゃん、青学の不二と知り合いらしいんじゃ」
声を潜め、仁王が言う。
「は?それがどうかしたんだよ」
それに釣られてジャッカルも声を小さくする。
「……今度の地区予選、あれ銀音ちゃんに来なくても平気だって言ったら、不二と連絡しとったら見に来たらどうかって言われたみたいでな」
「…まさか」
「そのまさかじゃ。銀音ちゃんのことやけえ、何かしら巻き込まれそうじゃ」
「だからか」
納得した声を出したジャッカル。
「二人とも話終わったん?」
「ああ、悪いな。それじゃあ仁王、頑張れよ」
「プリッ」
「ぷりっ」
口調を真似る銀音を仁王は撫でた。
「それじゃあ始めるぜよ」
「おんっ!」
「まずは口調じゃ。詐欺するときはイントネーションを変えんといかんからの」
仁王はビシバシ行くぜよ、と厳しく教えた。
「そうそう、そんな感じや」
「難しいな、…です」
「まだ油断しとると関西弁になるの」
くしゃり、と銀音の髪を撫でた。
「ま、慣れていけばよか。次は見た目じゃ」
「見た目?」
「ああ、とりあえず銀音ちゃんはばれんようにが目的じゃき。そこまで細かくはまだやらん」
道具を用意しながら仁王が言う。
「とりあえずカツラの付け方じゃ」
一度自分に付けたのを見せ、銀音にやるように促す。
「初めてにしてはようやったな」
「へへっ」
微調整しながら仁王が言った。
「……こんなもんか。もっと細かいんはそのうちやるけえ」
「おん、おーきに仁王!」
「ピヨ」
「ぴよー!」


















「周介ー。うち、仁王に言われて変装することになったんよ!」
『変装?それは凄いね』
「んでな、んでな」
その日、部活が早めに切り上げになった為、金太郎に電話をするまで不二と電話をしていた。
『それじゃあ、銀音はどんな格好してくるのかな』
「秘密やー」
『そっか。それは残念だな』
くすり、と笑い不二が言う。
「…あ、そろそろ金ちゃんから電話掛かってくるからまた今度話そうな!」
部屋に置いてあるウサギの時計を確認して、銀音が言う。
『うん、そうだね。お休み銀音。金太郎君によろしく』
「おんっ!」
電話を切り、銀音はドキドキしながら金太郎からの電話を待った。
早速今日あったことを報告する為に。



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