立海大家族1―妹が出来ました―
 

「む、精市。それは一体……?」
「あ、弦一郎。この子を育ててほしいって押しつ…渡されちゃって」
「そうなのか?しかし、渡されたとは……」
「ふふっ、でもさ。スッゴく可愛くないかな、赤ちゃんって」
ある日、母上が赤ん坊を連れて帰ってきました。




妹が出来たよ、立海大家族!




「母さん、その赤ん坊は一体……?」
「この子?この子は銀音。新しい家族だよ」
「そうではなくて」
「おー、ちっこくてプニプニしてんなー。ジャッカル、触ってみろよぃ」
「俺かよっ!……お、本当だ」
頬を触っているブン太とジャッカル。
「んー…やあーっ」
それが嫌なのか銀音はジタバタと暴れ始めた。
「あ、何やってるの。ほら銀音…大丈夫?」
ひょいと抱え上げた精市の目は笑っていなかった。
目はブン太とジャッカルに語っている。
『あとで面貸せや』と。
「ただいまー」
「帰りました」
「あ、二人が帰って来たみたいだね」
雅治と比呂士の声に、精市が反応する。
「みちゃー」
「おや、母上。その子は…」
「この子?新しい家族」
「そうですか」
簡単に納得して、比呂士は座る。
「いやいや、何で納得してんだ」
「ジャッカル君、母上のことです。いつものことでしょう」
「あー……否定はしねえ」
「ふふっ、二人とも何を言ってるのかな?」
コソコソと話す比呂士とジャッカルに精市が笑顔で近寄る。
優しく微笑んでいる筈なのに、何故か怖く感じる。
「い、いや何も…」
「そうかな?なら良いけど」
「りょー」
語尾を真似する銀音に精市が頭を撫でた。
「なかなか可愛いだろ?」
「確かに、可愛いけどよ」
「え?」
「カワイクテカワイクテショウガナイデス」
ブン太の声に精市が笑顔で尋ねる。
そんな精市に冷や汗をかきながらブン太が答えた。
「ふふっ、そういえば赤也は?」
「2時間くらい前に遊びに行ったぜよ」
「へえ…今日は出掛けるの禁止にしてた筈なのにね」
「母さん、」
「え?ああ…大丈夫だよ蓮二。ちょっとイップスかけるだけだから」
「イップスは止めた方が」
「大丈夫大丈夫、ちょっとかけるだけだからさ」
何か言いたそうな蓮二を無視して精市は玄関に歩き出す。
「赤也、今日は用事があるから留守番って言ったよね?」
「げっ……精市母さん」
「そんなことも分からないのかな、ああワカメだから分からないんだっけ」
精市の冷たい視線が赤也に突き刺さった。
どうやらマジギレしているようだ。
「すんません!」
赤也はその視線に耐え切れずに謝った。
「……次やったらどうしよっかな」
はあ、と溜息をつき精市は視線を外した。
「まあ今回は反省してるみたいだしね。特別に見逃してあげるよ。それじゃあ部屋に行くよ、赤也にも紹介したいし」
「紹介って…」
「新しくうちの子になった子だよ」
精市が静かに笑んだ。


















「赤也、挨拶は?」
「いやいやいやっ、何か色々おかしくないっスかこの状況」
「何が?」
「何で親父がボロボロになって…」
「さっき銀音ちゃんが暴れての。被害にあったんは父さんだっただけじゃ」
弦一郎のボロボロっぷりに赤也は軽く引いていた。
「ほら、赤也。妹の銀音だよ」
「こんな状況でも動じないのか精市さん…」
ジャッカルがぼそっと呟いた。
「え、だってこんなの(俺は)痛くも痒くもないし」
輝かしい笑顔で精市が言えば、その場にいた全員(銀音除く)が無言で目を逸らした。
「えーと、赤也だ。お前は銀音…だったよな」
「せやー!」
「銀音、赤也達のことは『兄』だと思って良いからね」
「きんはー?」
「金太郎君もお兄さんで良いと思うよ」
「ブン兄、銀音って赤ん坊なんだよな?」
「その筈だけど普通に会話してんな」
「………、」
「赤也、気にしたら負けだ」
「蓮兄…」
複雑そうな顔をした赤也に蓮二が声を掛けた。
「……っ、先程は一体」
「おや、父上。大丈夫でしたか?」
「うむ、何とかな。…しかし銀音といったか。あいつは将来化けるぞ」
「自信満々に何か親父が言ってんですけど」
「気にしたら負けじゃけ」
「そーそー。つーかいつものことだろぃ」
赤也の言葉に、雅治とブン太が反応した。
「この分なら、道場で武道を教えるのもいいな」
「ふふっ、やだなあ弦一郎は。銀音は女の子だよ?まさか道場継がせるとか言わないよね?」
精市は首を傾げながら言う。
「いや、そのつもり」
「弦一郎?」
「……はない」
「そっか、だよね。まさかそんなことないもんね?」
精市の押しに負けた弦一郎。
「だって道場を継ぐのは赤也だもんね?」
「……そ、そうだな」
「ええっ!俺初耳なんスけど!」
「今言ったよね」
さらりと流され、赤也は何も言えなくなった。
「……とにかく、今日から銀音は家族だ」
長男である蓮二が話をまとめた。
「何か文句があるやつは俺のところに直接お願いね」
…どことなく楽しげな精市に誰も反論しなかった。
「それじゃあ解散。夜ご飯までに集合だから。ああ、ブン太とジャッカルは俺のとこに来てね」
「「!」」
先程のことを見逃す気がない精市にブン太とジャッカルは冷や汗を流した。



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