ねた帳 | ナノ




交わるとは限らない平行線

誰にも理解されることはないんや、とアイツは笑うた。
「……っ!夢、か…」
カチカチ、と時計の針が進んどる。
時間は夜の12時や。
いつもならば寝ている時間に目覚めてもうた俺は溜息をついた。
……嫌な、夢やった。
俺の家系は昔から変わっとって、人ならざぬ力を持ったり人ならざぬモノが見えたりするやつが多くおる。
いや、おったらしい。
段々と血が薄れてきとったから、ここ数世代はそないな力持っとるやつはおらんかった。
けど先祖返り言うんやろうか、俺と従兄弟の謙也は見事に力を持って生まれてきた。
…力は俺ら共々強かった、ただ力のベクトルは全く違う方向やった。
謙也は人の心が色になって見える、俺は…無になる。
気配なんかを消したり、心を閉ざしたり。
俺が力使っとると、謙也は俺の心の色が見えんらしい。
一回ぼやいとったわ。
…せやけど、その力のせいで謙也は人に不用意に近づけんかったし、畏怖の目で見られとった。
『忍足』という家系がそういうものだと理解しとった家族や親戚は普通やったけど、他の家は違うた。
まだ小さかった俺と謙也は力を使いこなせておらんかった。
…いや、俺は平気な方やった。
心を閉ざしたりしとるだけやからな、気付かれん。
謙也は…『〇〇はみかんいろや!』とか言っとって、最初は皆と仲良くしとった。
けど『×××、なんやいろがよるみたいや…』そう言った次の日、×××というやつは死んでもうた。
謙也の目は、人の性格やら様々なものを色として見ることが出来る。
直前やなければ分からんけど、死んでまうことも。
度々そういうことがあって、謙也は一人で浮いておった。
小学校の間は俺がおったから、平気やったけど…中学に上がるとき、オトンが東京の病院に転勤することになった。
謙也は大丈夫や言うてたけど、心配やったから電話を掛けては自慢話なんかをしあって張り合った。
でもそんな心配も杞憂やったみたいで謙也には仲間が出来とった。
中学に上がるときにブリーチした謙也は髪の色みたいに輝いとったんや。
ちっさい頃の謙也と同じくらい笑うようになったんは、四天宝寺のやつらに感謝しとる。
…けど、いざ謙也の目のこと知って嫌うんなら一回殴り込みやな。
俺もあいつには甘いなあ。

謙也と忍足眼鏡のお話。
というより忍足の独白。
一応忍足からの謙也への認識ver.緋花。

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