ねた帳 | ナノ




どうして

『、俺どうすればいいんだよ…』
トボトボと歩きながら(いや、今の俺は幽霊みてえだから浮いて?)俺はテニスコートへと足を動かす。
俺の体を取ったやつはさっき慌てて家を飛び出て行ったばかりだ。
つーか、学校何処だか分かんのか…?
ふと過ぎった考えを消して見えてきた学校を見つめる。
「ってえぇぇぇ!」
『!』
俺の声がする。
どうやら辿り着いたらしい。
…ああ、痛くないのは嬉しいけどあれは俺じゃねえのに。
少しだけ、悲しくなった。
確かにあれは本物の俺から見てもすっげえ俺みたいだ。
そこに〈切原赤也〉がいるみてえに。
先輩達、気付いてください。
それは俺じゃないんスよ。
そう叫んだ俺の声は響くこともなく、テニスコートに響くボールのインパクト音だけが鳴り響いた。











『……どうなっちまう、のかな俺』
カシャン。
どうやら物には触れようと思えば触れられるらしい半透明な俺はテニスコートの周りに張り巡らされている金網を掴む。
既に全員が校内へと入って行って、この場には俺と仕舞い忘れられたテニスボールだけが残っている。
『真田副部長にばれたら怒られんな、これ…』
ボールを拾い上げ、呟くと更に悲しくなった。
俺はその怒られる中にはいないんだ。
『……何で、だよ…っやっと、やっと追いつけたのに…』
一年間。
俺は中学で先輩達を追い掛ける為にがむしゃらにやって来たのに。
確かにあの夏、先輩達と挑んだ夏は負けちまった。
けど次こそは三連覇するって、約束してたから俺は部長として立海を全国優勝まで引き連れて行ったのに。
先輩達だって全国で優勝して俺を待っててくれてて、俺が高校に入って全員が揃った、筈だったのに…っ。
『何で、俺はこんなふうになってんだよ…っ』
ああ、誰か気付いてくれ。

〈小さな幸せ、緋色の花と共に〉
緋色主と会うまでの赤也でした。
まだここから少し続く予定です。

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