text(5☆) | ナノ
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「なんか実感わかないなー、今日で卒業なんてさ! ねっ、さくらちゃん」
「……確かに。五年、思えば長いようで短い時間だった。朝日奈よ」
「しんみりしちゃうねえ……っん、なーに?」
「この学び舎を巣立った後も、我と友で在ってくれるだろうか」
「!!! 当たり前じゃん、もー……! あしたもあさってもLINEするよおぉ」
「は、済まぬ、泣かせる心算では……」
「――……あ、もちろん腐川にもLINEするかんねっ」
「い、いいい要らないわよォ! 悪かったわねあんたたちの近くに居てっ……へ、へへ変な気遣いさせちゃってっ……」
「然れば、我もお主の連絡先を聞いておこう。腐川よ」
「な、何言っちゃってんのよ大神まで……ばかじゃないの――……あ、…あたし、携帯電話、持ってないの。……だ、だから、メールアドレスを教えるわ」

「あんたらの進路ガラパゴス島かよってレベルでバラエティ色豊か過ぎっしょ。フツーに進学する奴らのほうがレアじゃん」
「あら、江ノ島さんもその一人ではありませんか。とはいえ貴女の場合は寧ろ本業に専念する、という言い方が正しいのでしょうか?」
「俺としちゃあ色んな界隈にツテができて有難い限りだべ。食いっぱぐれる心配もなくて将来安泰、持つべきもんはエリートの友達ってな〜」
「ほう、初耳だな。この学級には葉隠の友人がいたのか」
「ああんひどいべ十神っち、ンな相槌打ってくれるよーになった時点でお前さんも立派な俺のソウルフレンドだってぇ!」
「ふーむ……にょたならアリですかな、ツンデレお嬢様×テキトーだけど憎めない自由人」
「山田貴様何を考えている!」
「あら、わたくしは逆ではないかと思うのですが。というかこの御曹司が無様に組み敷かれているところが拝みたいというだけですが」
「最後までこの俺を愚弄する心算か安広多恵子ォ……!」
「っつか葉隠とか何をどうやっても残念な絵面にしかならなくね? むくろちゃんレベルで残念っしょ」
「野郎と絡むなんざ俺のほうからお断りだべ! あ! 苗木っちを代わりに差し出すからそれで一つ! どやだべ!」
「苗木誠殿の無限の汎用性にはいつもながら唸らされますな……」

「……あはは、卒業式当日なのに皆いつも通りだなあ」
「78期らしいと思います。これがわたしたちですよ――あ、この写真もいいですね」
「だろ? さっすが舞園ちゃん確かな目ェ持ってるわ〜! 学祭のステージ、オレの念願のステージデビューよ」
「あ、それじゃないですお隣お隣」
「ですよねー……」
「澪田先輩から聞きましたよ、ギターの練習すっごく頑張ってたって――そうそうこれこれ、これです! 体育祭の霧切さんの学ラン姿! 応援団、最高でしたよねっ」
「――……クラス代表者を決めるクジに細工を施してくれたセレスさんを私は一生許さな、いえ、一生忘れないわ」
「(舞園ちゃんは優しいのに隙がねえし霧切の目はこえーし何でオレここにいるんだろ…)」
「これは修学旅行のときの写真かな。あの二人しか写ってないし、あとでプレゼントしてあげなよ」
「あー……そうな、っつかあいつらどうせ自分らの写真とか山ほど持ってんだろうけどな」

「戦刃さんっ」
「……あ、……えと、不二咲。と、大和田。……私、あの、何かした?」
「なんで卒業するっつーのにテメーに因縁つけなきゃいけねえんだっつの。コイツが用だってよ」
「だ、だって…あの、お礼参り、的な」
「ヤンキー漫画の読み過ぎだろうが……」
「ち、違うよぉ。あのね、これ」
「卒業アルバム……? 私も貰ったから大丈夫だよ、余りは職員室に届けなきゃ」
「違ェよ! お前マジで残念か……おら、開いてるページよく見てみやがれ」
「……あ、」
「えへへっ、みんなからメッセージを書いてもらってるんだぁ」
「スゲーだろ、ちゃんと十神やらセレスからも一筆ぶん捕って来てんだぜ。不二咲も強くなったわな」
「あの……私も、いいの?」
「勿論だよぉ! あ、いっこだけ。僕宛てにじゃなくて、78期のみんなに宛てて一言書いてほしいんだ。あとで僕が画像にしてみんなに送るから」
「そっか、……それなら、うん、お邪魔します。……あ、あれ……?」
「オイこのタイミングでのインク切れってもう残念とかっつうレベル超えてねえか……?」



「皆さんの門出が晴れやかなものであることをお祈りしつつ、――……うふふ、やっぱり寂しくなってしまうわねえ」
「ああ」
「……ねえ、清多夏さん」
「うん? どうした、白雪」
「あたし、こうして同じ学級になった彼ら彼女らのこと、……他でもないあなたに出会えたこと、この学園で過ごして得たこと、きっとずっと忘れないでいるわ」
「……僕だって同じだ。きみという幸いと巡り合えたことを永遠に覚えていよう」

「おいイインチョ、最後までしっかり仕切れっつーの!」
「ハッハッハ申し訳ない! では――最後に…ではないな、この善き日の記念に、78期生一同で今一度集合写真を撮ろうではないか!」


・ずっと忘れない

//20161221


 当然のように隣同士に並んだ後ろ手を、当然のように繋いで。
 当然のように常に隣に並んでいた日は、当然のようにこれからも。