「あー…休み明け、だりぃ……」
「おはようございます、桑田くん」
「っ舞園ちゃん?! やべ、今オレくっそダサかったかな」
「いいえ、気持ち分かります。朝は眠いですしお休み明けはしんどいですよね」
「いやいやいや天使かよォ! なんかめっちゃ癒されたわ」
「えっ羨ましいです、わたしは癒されてないのにー」
「えっ、……いや、なんかゴメン……でいいの? よくねーよな、あーコレあげるよ、パインアメ」
「わあ、いいんですか? わたしこれ大好きです」
「ウン……ちょいちょい思うけど舞園ちゃんの返しって独特だよ、ネ。――っと、前方に有栖川ちゃん。つーことはぼちぼちアイツも来んな」
「――ッ有栖川くん!」
「あら、石丸さん。ご機嫌好う、いい朝ねえ」
「! お、お早う御座いますッ! ……そ、その、今日も良い天気だ! な!」
「そうね、お洗濯日和だわあ。とはいえ此処ではランドリー頼りだからあまり関係はないかもしれないけれど」
「ぇ、と、あ、……っそ、そそそれと、絶好の外出日和でもあるッ! そう思わないかね有栖川くんッ」
「うふふ、確かに然様ですわねえ」
「と、ときに有栖川くんは、その、ほ、本日のほ、放課後などは、何所かに出掛ける予定などは、無いのかね」
「あたし? ええと、……そうねえ、私事で恐縮なのだけれど」
「っわ、わわ私事だからこそ伺いたいんだッ」
「んう? 今日の放課後は趣味の道具を探しにいこうと思っていてよ。色鉛筆、できたら多色であればあるほどよくて」
「は、ハハハ奇遇だな! 僕もかねてから斯様な文具にはその、た、たいへん興味があって、だな……! どうだろう、有栖川くんさえよければ、その、あー、同伴しても、構わないだろう、か」
「あら、よろしいの? なんだか意外、余暇の時間を極力厭う御方だと思っていたものだから」
「な゛……ッ、そ、そんなことあるわけないだろう! ぅ、や、やはり、迷惑だろうか」
「とんでもない! うふふ、とっても嬉しいわ」
「そ、そう、か…そうか、……良かった」
「それではまた時間については追々。失礼するわね」
「こ、これから登校するのであれば、その、……教室まで、一緒に、その」
「! あ、そういえばそうねえ! 同じ所に向かうのだったわ」
「……イインチョ絶対色鉛筆とか興味ねーだろ、無理やり過ぎかっつーの」
「うーん、白雪ちゃんにしてはふしぎな言い訳ですねえ、色鉛筆なんて」
「は?」
「あー、あのですね、白雪ちゃん、こないだ新しい色鉛筆もう買ってるんですよ。ちなみに趣味って塗り絵なんですけどね、うん確かに買ってました。……ふふふー、お出かけの口実を作りたかったのかなー」
「いやいや待って待って舞園ちゃん、え? なに、あそこって石丸の片思いじゃねーの?!」
「こーえーがーおおきいです! これでもくらえーっ!」
「んがっ?!」
「もー、さしものアイドルも実力行使に出ざるを得ませんでしたっ」
「せめて普通に手で塞いでほしかった……いや美味いけどさ、舞園ちゃん何コレ」
「花村先輩特製の苺ジャム&マーガリンinパンです」
「あーそりゃ美味いわ。なんかサンキュー……じゃねーわ話逸れちまった、え、何、有栖川ちゃんもまさかあの堅物ヤローが良いってワケ?」
「知らなかったです? なーんて、多分わたしと霧切さんしか知らないんですけどね。気付かないと確かに石丸くんからの熱烈な片思いに見えなくもありませんし」
「まあ時間の問題っちゃあ時間の問題だろーなとは思ってたけどよお」
「うーん、でもね桑田くん、これくらいは気付けなきゃだめですってば。気をつけて見てたら丸分かりじゃないですか、特にさっきなんて」
「有栖川ちゃんの朝イチの振り向き笑顔で露骨にデレデレするムッツリ野郎ならオレも見たけど」
「桑田くんそれわりとブーメランなやつですよ――ふふ、今度からちょっぴり、白雪ちゃんのほうにも注意して見てみてください。あ、あんまりがっつり見ると石丸くんからいらない疑いをかけられちゃいますからそれは気をつけて」
「ほーん……?」
白雪ちゃん、この週末は巫女さんのお仕事でずーっと大変だったはずなんです。ちらっと見えたいつもの笑顔もなんだかちょっぴり疲れちゃってるように感じましたから。
なのに、石丸くんの挨拶一つで、それこそ見違えるようにきらきらの笑顔に変わったんですもん。なるほど、彼は超高校級の"アイドル"以上にひとに元気を与える名人なのかもしれません――こと白雪ちゃんに対しては、絶対そうです。
・笑顔のゲンキ
//20161217
「あ、でも石丸くんが白雪ちゃんの笑顔で露骨にデレデレしてるっていうのは紛うことなき事実ですよ」
「ですよねー」
「というか基本的に白雪ちゃんに構ってもらってるときはいつでも露骨にデレデレしてますよね」
「違いねえわー」
「白雪ちゃんの写真をスクラップするためだけに宗教雑誌の定期購読始めたって言ってましたし」
「あー流石のオレも腐ってもクラスのダチのそういう話までは聞きたくなかったやつ〜」
「わたしもできることなら知らないでおきたかったやつです〜」
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