text (しつもん!) | ナノ


( 1 )霧切さんや舞園さんに対してはどのような関係ですか、またどのような感情や印象をもっていますか?

 むぅ、白雪の話題ではないのか……否、僕に質問をくれた誰かの気持ちには報いねばなるまい。誠心誠意お答えさせて頂こうッ!

 とはいえ霧切くんと舞園くん、か。勿論よこしまな想いなどは欠片もないことをここに宣言しておくぞ。なに心配は無用だ、風紀委員として常に公明正大であることを信条とする僕の発言はたとえ赤や青で表示されずとも必ず真実を記述するのだッ。
 即ち関係は「級友」だ、この一言に尽きよう。二人とも、元来生まれ持った才覚に留まらず弛まぬ努力により現在の地位を築いている尊敬すべき人物であると思っているぞ。

 霧切くんは学業成績もなかなかに優秀だ。成績を優秀に保つということ自体に意義を覚えているという訳ではないようで授業時に自らすすんで発言をすることは殆ど無いが、特に理系科目などは宿題に困っている女子諸君に毎度頼られている姿を見るな。彼女は非常に冷静で、確かに学級始まって当初は少々協調性に欠ける様子も見られる人物であったが、最近はそのようなことは無いようだ。白雪や舞園くんと親しい友人付き合いをするようになってから、彼女たち以外の級友とも交流を持つ機会が増えたようだな。
 舞園くんも日頃芸能界活動で忙しくしている身でありながら学業成績には何ら問題は無いようだ、公欠で受けられなかった授業のぶんは文系を白雪・理系を霧切くんがフォローしているらしいぞ。なんと美しい友情の在り方だろうかッ! 学生としても望ましい姿勢であると僕は思っている。彼女は心からクラスの女子諸君を愛しているらしく、誰かが持ち物や飾り物を新調したり散髪して来たりするといの一番に反応を返している。他人の機微に敏感な人物なのだろう――その割に、桑田君がファッショングラスを掛けて登校してきた日には全くの無反応であったが。

 二人は白雪の良き友人なのだ。三人で歓談している様子を眺めているのは、78期の面々にとってとても快いことだ。それというのもだな――以前一度だけ、舞園くんと霧切くんがひどく揉めたことがあったのだが、そのとき僕たちの中でそれに対して顕著な反応を見せたのがあの十神君とセレスくんであったのだ! ことの重大さが分かるかね、よりにもよってあの二名なんだぞッ! 「調子が狂う」とか「愚民如きが周囲に気を揉ませるなど笑止極まりない」とか言っていたが、つまりそれだけ彼女たち三人が仲睦まじくあるということが78期生としては日常なのだと認識しているということなのだと僕は思っている。……ただ、日頃そうそう気の立つことも無い彼女たち二人がどうしてあそこまで揉めることになったのか、どれだけ当人たちに訊ねても教えては貰えなかったのだ。白雪もよく知らないらしい。

 まあ、それは措いて――兎に角、霧切くんも舞園くんも僕から見れば非常に模範的な学生であり、且つ、白雪の心強い親友であるということだッ! 回答はこれで十全だろうか?

















 ――否、勿論なんの不満も無いなどと言えるほどには、僕とて出来た人間では無いのだがな。

 なぜ白雪は休日になるとしきりに彼女たちと遊びに外に出たがるのかとか、この間は折角僕と二人で過ごしてくれると約束したのに霧切くんが風邪で寝込んだと知るや舞園くんと二人で泊まり込みの看病に向かってしまい僕は寂しかったとても寂しかった、とか、僕と二人で買い物に来ている以上は僕とのことだけを考えて貰いたいというのに小物を気に留めるたび「これは響子さんに似合いそうね」などと彼女たちの分まで見繕いだすのは勘弁して欲しいとかああこれは完全に八つ当たりなのだろうけれど仕方ないのだ、それから白雪は同性に対してどうにもパーソナルエリアが狭いきらいがあってしばしば自分の飲食物を霧切くんや舞園くんにいとも容易く共有させてしまうので心が狭いことは重々承知なのだがたとえ間接的なそれであったとしても僕以外との接吻は好ましくないと感じてしまうのは致し方ないと思う、あとは最近白雪が下着や水着、新しい洋服などの見立てを彼女たちに一任してしまっているのが僕としては寂しいのだ、白雪としては「男性にこのような事お願いしても困らせてしまうだけだものね」などと言っていたし確かにそれは気遣いの範疇なのだろうし僕としても毎回門外漢として顔を赤くしながら付き合ってはいたけれどそれは断じて白雪の衣服を選ぶことが苦痛だとかいうことではなく寧ろ僕の好みを如実に反映できる言わばご褒美とも言うべき作業であったにもかかわらず僕の表現力が乏しかったが故にこんなことに……何を察しているのか霧切くんが選定に混じると白雪の下着は途端に保守的なものになってしまうし――否僕は決してそんな過激なものを求めているわけではない、ただ純白や薄い桃色にレースやフリルは欠かせないと位しか考えていないさ――、舞園くんは恐らく「自分が白雪に着せたいもの」を基準として選んでいるのだろうが結果として白雪が纏う洋服すべてがやれボタンだ紐だ重ね履きのスカート――あれは何と言うのだ――だ、と兎に角非常にその、脱がせるのに苦労を強いられる仕様となってしまうのだ、そうだ何が気に入らないかと言えば最近僕はそこが一番気になっているのかもしれない。
 なんというか、そうだな……むぅ、色々思う所はあるにせよ、白雪の大切な友人らであることに変わりは無いのだ。僕から何をか言う事もあるまいよ。僕はそう考えているぞ。つい少々零してしまったが、そもそも陰口など僕の主義信条に大きく反するのだッ! 今後はこの問題を解決できるよう、僕のほうから行動で示して行こうと思う。自分の考えを整理できる良い機会になったな、質問感謝するぞ。有難うございましたッ!




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