text (風紀巫女SS) | ナノ
超高速!幸運生誕祭


「苗木くんごめんなさい! お仕事忙しくってこんな時間まで掛かっちゃって……! えっとえっとお誕生日おめでとうございます!」
「……誤算だったわ、まさかみんな揃ってこの日を空けられなかっただなんて」
「わ、舞園さん霧切さん?! いいよ、ボクなんかのためにわざわざ……それに、こうしてみんな来てくれたじゃない。それだけでボクはほんとに嬉しいから」
「それでは此方の気が済まないというのだ苗木くんッ! かくなるうえは今から1時間でしっかりきみを祝ってみせようじゃないか!」
「そうだよぉ苗木くん! あのね、みんな勿論ちゃんとプレゼントは用意してたから安心してほしいな!」
「う、うん有難う石丸クン不二咲クン! 巻き進行のせいでボク含めて心なしかみんな『!』多くてすごく読んでて疲れそうだなって思うよ! 1時間しかないってことは裏を返せばまだ1時間はあるんだ、ゆっくりやろう! 落ち着こう!」

「じゃあ苗木くん、これわたしからです」
「舞園さん! ……え! これって舞園さんたちのグループのライブチケットじゃないか! しかもアリーナ席……いいの?」
「喜んでもらえるならわたしもとっても嬉しいです! ふふっ」
「……え、本当にいいの? なんかすごく此処の舞園さんらしからぬ綺麗なシチュエーションだけど大丈夫? ボクこれ騙されてない?」
「苗木くんちょっとひどくないですか?! いくらダブルヒロインからほったらかされてるからってひどいですよう! まあ霧切さんには最前列チケット差し上げてるんですけどね!」
「ほらやっぱりそうじゃないか―――――――!!!!!!」

「私からはこれ。才囚学園のモノモノマシーンでしか手に入らないものなのだけど、ちょうど同業の知人が居て手配を頼んだの」
「(! やった、時計型ゲーム機かな? それとも前向きな加湿器…いや、学内にあるらしいっていうカジノ限定の「強運のボタン」とかかな?)」
「クマミミ」
「…………え、霧切さん」
「クマミミ」
「クマミミ」

「これは俺と桑田っちからの連名だべ。ご当地限定プリッツ全国ぶん!」
「う、うわあああ?! こんなにいっぱいどうしたの! 通販?!」
「バカ言え、ちゃんとオレらで冬休み中に現地回って集めたんだっつーの!」
「な…なんでそんな(アホみたいな)こと……ボクなんかのために……?」
「いんや、まあついでなんだけどよ」
「それな。たまたまお互い日本の半分側回ってたんだわ、オレは野球協会のチャリティーっつうことで西日本回って慈善試合」
「そんで俺はちっと諸事情で東日本回ってほとぼり冷まし」
「「うまく噛み合ったっつーこった!」」
「あーうんボクお菓子大好きだよ有難う! 葉隠クンについてはスルーするね!」

「苗木っ、これ私から! 私も使ってるメーカーのトレーニングウェア、苗木カラーだよ!」
「此れは我からだ。平生身体を動かし慣れぬお主にも扱える程度の鍛錬道具」
「……これ、えっと、…私、から。多分、苗木が今使ってるのと同じブランドの、シューズ」
「朝日奈さん、大神さん戦刃さん、……えっと、有難うなんだけど、……すごいボクを鍛えさせようとしてる……?」
「だってだって苗木、鍛えたらきっと苗木もすごくなるって!」
「然様。彼奴らに可能だというのであれば苗木、お主にできぬ理屈が無いわ」
「そう、だよ。苗木も頑張って鍛えて、……机とか椅子とか張り手で弾き飛ばせるように、…なってほしい、から」
「ねえ三人とも何の話してるの?! そんな超高校級になりたくないよ!」

「わたくしからはこちらを差し上げますわ。どうぞ泣いて喜んでくださいね」
「わあ…床に置くんだ……? 拾うとこからかぁ……」
「うふ、如何でしょう」
「え、……っと、紅茶の茶葉だ」
「なにかおかしいですか? プレゼントとは自分が貰って嬉しいものを相手に差し上げるものではありませんか」
「いや、……うん、普通に嬉しいからビックリしたってだけだよ。有難うセレスさん」
「構いませんわ、精々それでわたくしに美味しいロイヤルミルクティーを淹れてくださいな」
「待って?! 自分が貰って嬉しいものってそういう意味じゃないよ?!」
「うふふふふふふ」

「たいへんだッ! あと30分しかないではないか!」
「いや、だからボクはそんな日付とか時間とか気にしないんだけどなあ」
「苗木くん、これは僕からだ。友人が多いきみのことだ、彼らとの付き合いに時間を費やすことも無論有意義なことだと理解しているが、勉学にもきちんと取り組んでくれたまえ!」
「わ、このシャーペンかっこいいなあ……! 石丸クンから貰ったものなら間違いないや、なんだか成績も上がりそうだよ」
「うふふ、これでも結構悩んでいらしたのよ? ボールペンとカラーペンもセットなの、これが一番お薦めなのですって。――あたしからは此れ。受け取って頂戴」
「有栖川さん、有難う。これって部屋着用の靴下だっけ、シャワー上がったあと寒いなーって思ってたんだよね。早速明日から使うよ」
「ふかふかで可愛いわよね、きっとクマミミと合うわ」
「と…遠くから霧切さんがこっち見てる……」

「苗木君、これ僕と大和田君からだよぉ」
「有難う二人とも……え、えーっと……」
「あ? オメーさては嬉しくて言葉にならねえってやつか! ったく義理堅ェ男だぜ、別にこんくれえ、ケーキの一つや二ついつでも作ってやんよ!」
「(ケーキだったんだ?! 現代アートのオブジェかと思ったよ!)」
「CGはともかく、実際に絵を描いたりっていうのは僕あんまり得意じゃないんだけど…えへへっ、今回は頑張っちゃった!」
「(なんでそんなに自信満々なんだ! ……いや、でもお菓子作り得意なイメージが勝手にあったから、なんというか、こういう不二咲クンは新鮮…かもしれないな)」
「まあまあ、ひと口いけや苗木!」
「ほごぉ!(んぐんぐんぐ)……あ、…れ、美味しい……すごい美味しいよ!」
「! わあ、ほんとぉ? よかったぁ、安藤先輩に習ってきた甲斐があったよぉ」
「だな! ダチが喜ぶ顔っつうのはやっぱりいいもんだぜ。おら、このチョコでできてる苗木人形も食っとけ」
「(あっそれボクだったんだー! 都市伝説の「くねくね」みたいなやつだとばっかり思ってたー!)」

「苗木誠殿、拙者からはこれを」
「山田クンっていつもプレゼントはあんまりその…漫画とかアニメグッズとか選ばないんだよね。スマホの携帯充電器、普通にすごい嬉しいや」
「真のオタク道を極めしオタクはそうそうパンピーに自らの領分を押し付けたりはしないものなのですぞ。相手に嫌がられてしまっては、自分が好きなものをみすみす否定させにいっているようなものではありませんか」
「成程ね……なんかすごい納得。でもボク、普通に漫画もアニメも好きだよ?」
「苗木誠殿でしたらそう仰ってくれると思ってその充電器、実は接続するたびに数多の美少女キャラのボイスが「ボクそういうのが好きだってわけじゃないんだけどなぁ!!!!」

「あー、アタシ? なんも考えてなかったわ。はいコレ、あげるー」
「別に無理してくれなくってもいいんだけど……え! これ花村先輩の食堂ビュッフェ優待チケットじゃん! いいの?! え、江ノ島さん…ボクこれすごく行きたかった……!」
「いやそこでめっちゃ喜ばれても困るんだけど。アタシにそんな目ぇキラキラさせて感謝する苗木、って絶望的な絵面くね?」

「えーっと、腐川さん……」
「な、なななによ…あるわよ、ほら」
「……わ、これ万年筆か。大人っぽいなあ、ボクもこれ似合うくらい大人になれたらいいな。有難う、大事に使うよ」
「そ、それと……白夜様から伝言なんだけど、」
「あー……そういえばいないね、十神クン。まあ流石にボクなんかのために来てくれたりしないか、来てくれるほうが気持ち悪いっていうか」
「今日は海外で支社会議があってどうしても空けられないから、後日指定する別日を絶対空けておけ……ですってよ」

「はあ?!」

「うわ十神っち露骨な苗木っち贔屓だべ……」
「ハッハッハ、彼ら二人の絆もまた、独特というか特別な趣があるからな!」
「な、なんですか?! 去年はディナークルーズでしたから今年は…むうん、遊園地貸切とかですか?」
「苗木君、クマミミを持っていくといいわ」

「くくく悔しいわああ! アンタ何なの、BがLなわけ?! 不純よ!!!」
「それは違うよ! その言葉斬るからね! ボクは普通に女の子が好きだし十神クンは自分のことが大好きだよ! ただ十神クンが初めての友達こじらせてるだけだから!」
「はっ、知ったこっちゃないわよ! と、とととにかく白夜様が仰せなんだからしばらくカレンダー真っ白にしておきなさいよね、これはアンタの義務なんだから……ッ!」

「え、えーっと……えーと……」
「1時間、ジャストねえ。うふふ、なんとかお祝いできたようでよかった」
「だ、ね。……あのさ、みんな。最初にも言ったけど、ボクはみんながこうしてお祝いにって来てくれたことが既に嬉しいんだよ。そのうえこんなに色々貰っちゃってさ。……やっぱりボクはツイてるや、みんな、有難う」




「ところでどさくさに紛れてボクにクマミミ乗せたの誰?」


・超高速!幸運生誕祭

//20170205


「舞園さんよ」
「見え透いた嘘やめましょう霧切さん?! あ、苗木くん! パーティー自体はちゃんと今日、6日のお夕飯でやりますから安心してくださいよねっ」

 23時から0時までの間の、あわただしいラッキーの嵐の話。


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