text | ナノ

大和田サンドを羨む。



「兄弟、Readerの課題ちょっと見せてくれや…オレ、次の授業の最初で当たンだよ」
「またかね…否、兄弟の場合は一応自分で解いてみようと努力しているのは評価できるが」
「あ。石丸くん、僕にも見せてぇ……! ちょっと自信ないんだぁ」



「あらあら、相変わらず"大和田サンド"は仲が良いんだから。微笑ましいわ」
「霧切さんっわたし出来ましたよ! "世の中ね、顔かお金かなのよ"、…なーんてどうですか?」
「舞園さんらしい素直な回文だと思うわ――ところでそっちのあなたはどうしたの、今更妬いているの?」
「まさか! あの三人にそんな感情持つだけ無粋だわ、響子さんもご存知でしょう」
「むーっ、むーむーむー! 相手してくださいよーふたりともっ!」
「そうね。…はいはい、よく出来ていたしあなたは打算のない純真な娘よ舞園さん膨れないでちょうだい」
「霧切さんが構ってくれたからご機嫌です! あ、わたしも妬く必要ないと思いますよー。本日も滞りなく歪みなくおふたりはらーぶらーぶですって」
「でも。……サンド、には憧れていてよ。絆、感が。その、とても素敵だと思うもの」


 ぎゅ(▽ まいぞの が だきついてきた!)

 ……きゅ(▽ きりぎり も てをにぎってきた!)


「わたしと霧切さんでちゃんとサンドしてるじゃないですかっ! 不満ですか? 不満なんですか? 愛してますよ?」
「正直、わたしたちのほうが石丸くんよりあなたのことよく理解していると思うわよ」

「なっ…待ちたまえ舞園くん霧切くん、それは聞き捨てならない!」

 やっぱり聞いていたのねと冷笑する響子さんを些か驚きを込めて見つめていたのも数秒間のこと、次に気が付いたときには既にあたし、清多夏さんの右腕と左腕でしっかりサンド…というかラップ、されていて。
 こんなときばかり察しよく離れたところでにこにこと此方を見守っているらしい大和田さんと不二咲さんには、やはり嫉妬というより感謝の念を抱くべきなのだろうと再確認する思いであった。この、どこまでも純朴で一本気で強くて脆い彼には広い世界が必要で。それは、到底わたしひとりでは成し得なくて。

「ともだち、って、よいものね」

 ――このタイミングで呟くにしては地雷レベルの選語であった、ということにはそのあと気付いた。

(きっ…きみというひとは僕よりも舞園くんと霧切くんを選ぶというのか! 僕を捨てるのか?!)
(え、あら? あら? どうして泣いてらっしゃるの。え、響子さん助け…居ない! 大和田さん不二咲さん…も、居ない?!)


//20131125〜1130