げーむるーむ! | ナノ

||| plus alpha


――キミは、僕の理性が強靭だったことに感謝すべきだと、思う。
それから、幾らそうしたいとはいえ、流れで早まったことができなかった僕の臆病さにも。

何も感じてない風に思っているかもしれないけど、僕は実際ほんとうにどうしようかと思ってるんだ。今も。な、なんかいい匂いがするし……あちこち柔らかいし、――……い、や、……だめだ、これ以上僕は一つも身動ぎすることは許されない……くっそ、…好き勝手してくれたな、楓さん……っ!

多分、キミが思うより僕はずっとキミのことが好きだよ。――「あのとき」より、今の方がずっと。変な話だけど、伝わるかも分からないけど、……きっと僕が好きなのは、今のキミなんだと思う。分かる、かな……? なんて、寝てるんだけどね。そして明日は覚えてないんだろうなぁ……。
「あのとき」僕が拾ったのは、きっと恋になる前の欠片だったんだろうと思う。キミを失うまでに繋ぎ合わせることができなかった欠片だ。でも、あの短い間ですら僕の手に残っていた欠片が、――こうして二人で向き合うことができる穏やかな時間の流れで、繋がらないわけがなかったんだ。過去の想いだけじゃない、今のキミから貰ったものが、僕の気持ちを確たるものにしてくれたんだ。……なんて、……絶対面と向かっては言えそうにない、けど。

好きだからこそ、怖いんだ。……僕は、臆病だから。
もう隠さないで言ってしまうと――どうせ楓さん寝てるし――、というか、お察しって感じだけど、僕は相当に独占欲が強い質だ。愛が重い、って言えば聞こえはいいんだろうけど……男のヤンデレって誰得だよって感じだし……それをキミに向けてしまうことが、申し訳ないというか、許されない気がするというか。仮にもキミは、友だちを探して来てくれたのに。僕の方から汚い感情を押し付けるのが、……やっぱり、怖いんだろうな。今でさえ「深入り注意」を掲げられてしまうくらい前のめりなんだ、これが大義名分を得たあとどうなってしまうのか、なんて――キミなら、言わなくても分かるよね。
それに、この世界には僕なんかよりずっと格好良くて「あのとき」の僕らしさを持っている僕が沢山いるから、……いや、でも、これはキミに対して失礼、なのかな。心変わりが怖い、なんて。1か月ぽっちで何を言っているんだ、と言われそうなのもまた、然り。

本当は夢になんかしたくなかった。今日を逃したら次は何か月後なのかもしれないって、一瞬思った。
それでも、……それでも僕は、――……ああ、でも惜しかったのかな、……嘘じゃないんだよ、僕も本当に…その、えーと、キス、したかったんだ……。うぅ……で、でも、あまりにキミが本調子じゃなかったから、……でも言い訳だな、結局は僕が臆病だったんだよ、な……。据え膳喰わぬは何とやら、を地で行ってしまったのかもしれない。それでも、……はあ……(沈痛)。

もし、キミが今夜のことを覚えていないなら……明日のテストが終わった後いっしょに仲良くプレス機までお散歩だ。
それで、もし覚えていたなら――忘れたふりをしたってだめだ、探偵を甘く見てもらっちゃ困るよ――……今日のキミが、明日のキミと地続きであると少しでも分かったなら。……申し訳ないけど、……キミからすれば残念なお知らせだけど、……もう、おいそれと手放してあげることはできないと思って、ほしい。

なんて――……ほんとによく寝てるな、この状況で……やっぱり疲れてたんだろうな。
……僕もとりあえず眼だけは瞑ろう。おやすみ、楓さん。――……分かるよね、僕はずっと僕としてキミに話してる。あの夜だって同じだ。

好きだよ。



(好きだよ、私だって。)



Mar 04, 2017 09:32
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