petit petit | ナノ

11月23日です。


※22日はおやすみだった設定です

「やあ、お早う諸君ッ! いい朝だ!」
「石丸オメー昨日何してやがったんだよ勿体ねえのー!」
「む? 昨日何かあったのだろうか」
「桑田くんに賛成だー! です! 何してたんです石丸くん、寧ろ嬉々として飛びつくだろうってみんなで観に行ったのにっ」
「観に……? ふむ、察するに何か催事の類かね」
「これです、これっ」
「パンフレットだな。……なになに、『11月22日はご存知"いい夫婦の日"』――」
「そーだよ! 駅前の広場で昨日『いい夫婦コンテスト』やってたんだっつの、ガチの夫婦だけじゃなくてカップルでもエントリーできるっつーからイインチョ絶対有栖川ちゃん連れてくんじゃねえかってオレらの間じゃほぼほぼ確定だったのによ」
「いないんですもん。アイドルしょんぼりでした! 結局76期の十六夜先輩と安藤先輩が優勝して商品貰ってましたよ〜、"超高校級の陶芸家"作の夫婦食器」
「ほう、成程。そうだったのか、知らなかったとはいえ肩透かしの形になってしまったことは申し訳ないな」
「えっ」
「あっさりです! いつもの石丸くんならもっとオーバーリアクションじゃないですかー」
「僕自身は特にショックでも無いのでだな……」
「ちなみに昨日オメー結局何してたんだよ」
「昨日? 平生と特に変わったことはない、いつも通りの一日だったぞ。

 白雪手製の朝食をふたりでゆっくり摂ったのち、洗濯や掃除を済ませて午前の学習。彼女が年の暮れの神事に用いる道具の仕入れに行くというので荷物持ちに同伴する道中に昼餉を軽く済ませ、夕餉は一昨日もご馳走になったカレーだった。やはり一晩寝かせたカレーはより美味になるという俗説は正しいのだなと僕はしみじみ実感した。その後は自室でめいめいに過ごした――嗚呼、もちろん過ごし方が別だというだけで白雪も僕の部屋には居たのだぞ。僕は左右田先輩から薦められた本を読みながら白雪が淹れてくれた茶を楽しみ、白雪はしばらく僕の傍らで趣味に興じていたようだがじきに眠ってしまった。入浴させている途中に漸く彼女が目覚めt「もういい!!!! もういいよ分かったよオメーら普通に夫婦だわ格が違ったわ分かったからバカップル自慢やめろォ!!!!」む? 自慢の心算など無いぞ、特に何ら変わったこともない一日だったということを報告したかっただけであって」

「1(いち)1(いち)アピールする必要もないほどの22(夫婦)の日、ですね分かります……」

 ***

いい、と言われることに関心はなく、単に彼女が自分のものだと認めてもらえていれば満足だし何より先ずは自分がその事実を常に実感していたい石丸くん。これまではそれこそ「いい」という評価や価値基準を第一義にしていたはずなのに。成長なのか変化なのか。

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2016/11/23 (04:05)

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