[ 薄暮に錯綜 ] | ナノ



旦那さんたちがバトンやったらしい(1)


「まりんさんがかわいい顔して差し出してきたものだから回答は義務だよ、石丸クン」
「僕に付き合う義務は無いのでは…ふむ、なになに。『恋人の行為をどこまで許せるかバトン』だと」
「正直ボクのキャラをコッチの管理者サンがどれくらい把握してるか分かんないし下手したら本家に怒られそうな気もするんだけどねえ」
「い、否、其方の管理者さまは寛大なかただと僕は信じているぞ……」
「まあいいや、いってみよ」

 ***

・仕事中にメールやら電話しろって言う

「なにそれかわいい」
「ふむ…少し考え難いな、白雪はそのような事を言う女性ではないので」
「それ言ったらおしまいでしょ。まりんさんからの束縛とかご褒美でしかない…ボクの幸運なら仕事中に携帯弄ってたって絶対バレやしないしね! 寧ろ望むところだよ」

・独り暮らしの部屋の合鍵をくれって言う

「「寧ろ何故くれと言われる以前にあげていないのかが分からない」」

・昔の恋人との写真やモノを捨てさせる

「……(←某イラストレーターが初恋なので答えようがない)」
「……(←某巫女が初恋なので答えようがない)」
「でも、何でもない知人とかのモノが偶然置いてあってそれを昔の恋人だと勘違いするケースとかありがちだよね?」
「白雪に捨てろと言われるなら何だって捨てる心算だッ」
「まりんさんが『こ、これ、わたしと買った指輪じゃないよね……? す…捨てて欲しいとかそんな事言わないけど、んうう……わたしの見えないところに、置いててほしいな』なんて恥ずかしさとちょっとの申し訳なさで真っ赤になってボクに聞いてくるわけでしょ? これは"このあと滅茶苦茶ry"のテロップを準備するべきだね」
「(白雪は却ってこのような手合いに寛容そうだ。それもまた、寂しいものだな)」

・夜中でもどうしても会いたいって呼びだす

「「当然、逢いに行く」」
「というかまあボクは常にまりんさんの傍に居るしね、わざわざ呼び出されるまでもないっていうか」
「むぅ…率直に羨ましいぞ。僕もそれくらい白雪と近しく在りたいものだ」

・独り暮らしの部屋に自分の荷物(服とか化粧品とか)をどんどん置いて行く

「「喜んで!」」
「寄宿舎のボクの部屋も最近ちょっとずつ増えて来たんだよね、まりんさんグッズ。やっぱり洗面所に歯ブラシが二つ、とかってベタながらきゅんとくるシチュエーションだよ」
「白雪は僕の部屋にものを置いてくれないのだ。『風紀委員さまのお部屋に女物の雑貨など置いておけないわ?』などと言って」
「真っ当じゃないの? スリランカ並みに正論だと思うけど」
「そ、それでも! ……お陰で僕は彼女の下着くらいしか有していないのだぞ」
「おまわりさんこの人です」

・異性の友達と遊ぶなって言う

「「寧ろ此方が遊ばせない」」

・まったく自分の趣味でない服装とか髪型を強要する

「好みとか教えてくれたら逆に嬉しいけどね。まりんさんだからそんなに突飛なものは出てこないだろうし」
「……」
「あれ? あれあれあれ? 石丸クンたらすごい汗でご・ざ・る・よ?」
「突然の企業ヒーロー物ネタは止めたまえ。……否、むぅ、何でもないんだ」
「超芸術トマソンのひとだからねえ……」
「き、きっと白雪だって人間の好き嫌いは常識的な筈だッ!」

・めっちゃ疲れてるのに、相手しろー! ってまとわりつく

「「寧ろ来てほしい」」
「まりんさんはここぞというところでピンポイントに誘ってくるけどね。それにしたってボクとしてはもうちょっと求めてくれたってバチは当たらないと思ってるんだよねえ」
「し、白雪なんて向こうで勝手に自己完結して酷い時など気遣いの結果普通に退室していった事があるぞ……」
「石丸クンが誰かのことを"向こうで勝手に自己完結する"だなんてブーメランめいて評価しているという稀有な現場に立ち会ったボクには0/1d4のSANチェックを「先輩は僕のことを何だと思っておられるんですかッ!」」

・人数合わせのコンパでも行かせない

「「いや、そもそも行かない」」
「「そして勿論彼女にも行かせない」」

・週三回以上は会いたいと言ってきかない

「「週三回? 少な過ぎる」」
「莫迦にしてるのかなこの質問」
「誤記ではないのかね。本来であれば一日三回以上、とするのが妥当なところだろう」
「あー、それならまだ理解の範疇かな。それでも少ないけどさあ」
「……否、待てよ。先輩、これは寧ろ逆の解釈をすべきなのでは」
「ん?」
「つまり、『会うのは週三回くらいにしたい』と言われる、と考えるのであれば」

「「それはどう考えても許せない。」」

・同性の友達と遊ぶときに付いてくる

「……ボクの場合どうカウントすべきかなー、多分質問者の意図を汲むならこの場合は男子、なのかなあ。日向クンあたりと遊ぶときにまりんさんが、ってコトか」
「僕の場合は兄弟と会うときに白雪が、という事だな」

「「うん、可愛い。」」

・特別な日を忘れたら激怒

「「それは怒られて当然」」
「寧ろ忘れるとか在り得ないからね、仮にあったとしたらボクは自分自身をさんざっぱらナイフで痛めつけたのちお腹にグングニルの槍でもブッ刺してやりたいレベルさ」
「白雪はあまり"特別な日"などを作りたがらないのだ」
「へえ、なんで?」
「『もしも終わってしまったとき、あたしだけずっと忘れられないのは辛いじゃない』などと言って。……日頃はあまり意識しないのだが、そういえば彼女は完全記憶能力者なんだ」
「あー、成程ね。でも確実に有栖川さんより石丸クンのほうが覚えてそうだし忘れなさそうだよね」
「そもそも万に一つも在り得ない仮定を持ち出されること自体が僕にとっては遺憾極まりないのだがな」

 ***

「終わったね」
「うむ、終わったな」
「……なんというか、これについて"許せない!"なんて言う男がいたらそいつは間違いなく彼女を愛してないよね」
「まったくだな。寧ろ僕はこれくらい白雪に求めて貰いたい位だというのに」
「ボクとしてもそれぞれのシチュエーションのまりんさんを夢想しただけで苦手なはずの白米が十杯くらいイケる気がしたよ」

「あらあら、あちらのお二人は随分と楽しくしていらっしゃるのね。まりんさん、何かご存知?」
「うん。いまクラスの女の子たちの間で流行ってるアンケート、ちょっと二人にもやってみて貰ってるんだぁ。2000字強も使ってわいわい楽しんでくれてるみたいでなんだか嬉しいな」
「お二人の回答、あとで覗きに行ってみましょうか」
「もっちろん!」





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