「次は××駅ー、××駅」



車内アナウンスがかかり、扉が開くと同時に俺は電車を飛び降りた




「やっべ、天才的な俺が遅刻ってのは不味いだろぃ…!」



俺が焦りながら、急いで階段を下がっていると




「あ」



前方に、呑気に歩いている仁王が見えた



アイツはいつでも遅刻する気満々だな…



俺がだらしない仁王に呆れていると



ガクッ



俺としたことが、うっかり階段から足を踏み外してしまった



「………っ!!!」




体勢を立て直そうとするも、かなりのスピードで階段を下っていたため間に合わない



かといって、どっかの誰かみたいなアクロバティックは俺には出来ない



これは、ヤバすぎるだろぃ…………!!












「…っ、たた!」



階段を転がるように落ちて誰かに激突してしまったらしい、

頭にかなりの衝撃が走っている上に、目がチカチカしている



これは相当ぶつかった相手も痛かったはずだ




「あの!!
すいませんでし…、た」




慌てて謝ろうとしたが、目の前の人物を見て俺は呆然とする


なぜかといえば…



「ったいのう、何するんじゃ!!!」



そう俺に向かって文句を言ってきたのは


俺、丸井ブン太に瓜二つだったんだから



どうやらまだ視界が回復していないみたいだ

それか、これがドッペルゲンガーってやつなのか?


俺、死ぬのか?



俺の頭はパニックを起こしていたが

相変わらず目の前にいやがる俺自身も、俺の姿を見て目を見開いていた



「プリッ、」



ドッペルゲンガーがそう呟くのを聞いた瞬間、俺の中にひとつの嫌な予感が浮かび、恐る恐る、後ろ髪を触ってみた



やっぱり、これは



「仁王の尻尾………」








まさかそんなはずは





「……なぁ、仁王」



「なんじゃ」



「もしかして今、俺に変装してたりしねぇ?」



「ブンちゃんこそ、いつの間に詐欺師になったんじゃ?」





あろうことか仁王の姿になってしまった俺と、俺の姿になってしまった仁王は、同時にため息をついた










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