「千歳さ、私とキスするの大変じゃないの?」
かなりの身長差があるわたしと千歳
キスをするためには、千歳がだいぶかがまなければならない
「みかげのこと好いとるけん、そんくらいどうってことなか」
微笑みながら私の頭を撫でる千歳
「…う、千歳
聞いてっ!」
わたしは千歳の手を掴もうとするが、ひょいと避けられてしまう
「聞いとるばい」
「わたしが階段に上れば、同じ高さになると思うの!」
わたしと千歳は、学校の屋上に繋がっている階段にやってきた
「よし、上るよ」
わたしは、二段ほど階段を上る
すると、ちょうど千歳の顔が正面に来るようになった
「おぉっ、千歳の顔が目の前に!」
そんな状態で千歳が黙ってわたしを見ているので、なんだか照れてしまう
「…っ!
やっ、やっぱり止めよう」
そう言って千歳から顔を背け、階段を降りようとした
が
ひょいっと千歳に抱き上げられ、階段の上に戻されてしまう
「キス、してくれるって言うとったけん
ちゃんとしてくれないとダメたい」
千歳は微笑んでから、目をつむった
「…う、私からするの?」
千歳はこっくり頷く
なにこれ
は、恥ずかしい…!
今更ながら自分が言い出したことに後悔するが、ここは女としてやるしかない場面であろう
わたしは覚悟を決め、千歳の肩に手をおき、唇を近付けた
ちゅっ
そうして触れたのは、千歳の唇ではなく
……鼻だった
どうやら、いつもと高さが違うかせいか、キスを失敗してしまったようだ
「ごっ、ごめ…!」
わたしが謝ろうとした瞬間
グイッと体が引っ張られ、そのまま千歳の唇が触れた
きっと
もっと
ぎゅっと
ずっと
「みかげはキスが苦手たいね、むぞらしか〜」
「次こそは!」
「またしてくれると?
嬉しか〜」
「…あっ」
20120311