咳払いして取り繕って


「よし、入るで!」



俺は先日ここで借りたテニスの本を見つめてから、



再びあの図書館へと足を踏み出す



「……」



入ってみて改めて思うが、


ここはひんやりとして、静かで、自分みたいな男には似合わない場所



その場所をずかずかと歩きカウンターまで行けば、そこに座っていたのは麗しき彼女



(おった……!)



内心かなり喜びながら、それを必死に隠して「これ、返したいんやけど」と本を差し出した






「はい、了解しまし


………あっ、君、こないだの!」



どうやら(嬉しすぎることに)俺のことを覚えていたらしく、彼女はニッコリした



そして手際よく、返却の処理をしてくれた



綺麗な指、やな



俺は彼女の手元を見ながらぼんやりとそう思う




絡めたらどないなんねんやろ


………って、なんや!!俺は変態か!!!!




そう、自分で自分にツッコんでいると




「あの……」



と、彼女が美しい瞳で俺を見つめてきた



「なっ、なんすか!」


耐えられず目を背ける俺に、彼女は困ったように



「もう返却は、終わりましたよ」


と告げた



「すっ、すんません!!」




勘違いしていたのが、恥ずかしくなって俺はあわててカウンターを離れた



が、



ここで引き下がるわけにはいかない



俺は今日、本を返すためだけにここに来たわけやない…!





   咳払いして取り繕って







「あの、すいません」



俺は再び彼女の前に立つ



「はい、なんでしょう」



返事と共に、首を可愛らしく傾げる彼女(いちいちツボやっちゅー話や!)



そんな仕草にやられながらも、俺は勢いに任せて言った



「名前、教えてくれへんか!!!」



彼女は一瞬ぽかんとしてから、



「わたしの、ですか?」


と俺に尋ねた



「おん」



それ以外、あらへんやろ



ドキドキしている俺に向かって、


みかげといいます、と彼女は答え


静かに微笑んだ









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すごく楽しいのに続編が思いつかないという事実





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