…い、…ぱい

誰かに呼ばれている

「先輩、起きて」

その声に誘われるように重たい瞼をあける
「おはよう、先輩」
ぼんやりとした視界に笑みを浮かべたやつがいて
寝起きの頭はうまく働かなくて
ぼんやりとしたまま、俺は起き上がった

目の前に広がるのは綺麗な夕焼けで

夕焼、け……?
「夕焼け!?」
途端に頭がはっきりとする
記憶に残っている空はムカつくぐらい綺麗な青だったはずで

俺は慌てて光祈の方向を振り返る
俺の表情を見たあいつは苦笑いを浮かべる
「ごめん、先輩。あんまり気持ち良さそうに寝てたから、釣られて二度寝しちゃったんだ」
"お前なぁ…!"
そう言おうと口を開いた俺は不意に自分の元に制服が落ちているのが視界に入る

視線の先を追ったのだろうか?
ふわふわとした口調で答えが聞こえる

「先輩、風邪ひいちゃまずいかなって思って。ちょっとは暖かかった?」
笑みを浮かべている光祈に、何も言えずに黙っていると
その沈黙をどう勘違いしたのだろうか
その笑みは苦いものに変わる

その日、俺とあいつは出会った
本来なら交わることのない人生が交わり、やがて全てが始まる

俺はまだ知らない

ただその時、光祈が泣き出しそうな顔で言った言葉だけが何故か頭から離れずにいた

「先輩は…まだ生きていけるんだ…。だから、ダメなんだよ」


出会ったその日、屋上で気づいた俺と光祈はなんだか微妙な雰囲気を纏ったまま帰路についた

最もそう思っていたのはどうやら俺の方だけだったらしい
同じ方向でもないくせに

「えーっ?先輩と帰るって!」とわめいた末に、俺がバイトがあると言うと仕方なさそうに
「じゃあそこまで行く」と駄々をこね始める始末

何を言ってもガキのように聞く耳持たずな光祈を目の前にため息をついている間にバイト先に着き
何故か、気に入られたあいつとバイトをするはめに

「災難だ…」
「なんか言った?先輩」

現在向かう方向が違うと何度も言ってるのに聞かずについてきた光祈と帰り道なう
たかだか一日一緒に過ごしただけで俺まで自分のキャラが崩壊しそうだ
「で、お前はどこまで来る気な訳?」

そうぼんやりとしていた目の前の後輩に問う
「先輩、星だね…」
「はぁ?」

嬉しそうに微笑んでいる後輩を目の前に怪訝そうな表情が浮かぶ
「先輩…」
「何だよ?」

「まだ、ダメだよ?」

そう言ったきり目の前のあいつは背を向ける
その肩が、その背がどこか寂しそうに見えた気がした







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