01


君に伝えたい言葉

最大級の…?


〜朝〜
いつものように俺、白石蔵ノ介は朝練のためにテニスコートへと向かう。
いつも通りの気持ちのいい朝や、いつも通りの変わらん四天宝寺の空気や。

「お、部長発見♪」
「財前やないか、珍しく今日は早いんやな??」
「まぁ、たまには…ww」
「なんやニヤニヤしよって、気持ち悪いでー、自分…?」
いつもの彼らしくない言動に戸惑う
「何、企んどるんや、吐いてまい!」
そういうと彼は何とも気まずそうな表情を見せて何かを呟く

「だから、この役は嫌やゆうたんにあのやろ…」

くるっとこちらを振り返った彼はいつも通りの表情を浮かべてふいに俺の腕を掴む。
「部長、ちょっと一緒に歩いてくれません?」
「??朝連までなら、ええけど…」
ほっとしたように息を吐いた彼は珍しい事に優しげな雰囲気の笑顔を見せる

「しかし、ほんまに部長はうらやましいくらい強いっすよね…」
「何いっとるんや?俺より、天才呼ばれとるお前や金ちゃん、銀さんや千歳のが強いやろ?」
「謙也さんは入んないんですかwww」
「謙也はまぁ、別もんやww」
「俺は部長がうらやましいっすけどね。」
「?どないしたんや、財前。何かあったんか?」
いつもの彼らしくない口調やら表情やらに少しだけ不安になっていく
思わず伸ばしかけた手が目に入ったらしい
「部長、気にしすぎっすよ、俺はいつもこんなもんや。」

はっきりと拒絶を見せた彼に思わず怯むが表面上は笑って流していく
「ほんまか??w普段のお前やったらもっと意地の悪い顔でもっと怖い事言っとるで?ww」
「そんなことないですってww」
変わらないこのやり取り。
「…部長、そろそろ朝練はじまっちゃいますね」
「かまへんわ、いざとなったら小石川がやってくれるやろ。それよりも、おまえなんか今日ほんまにおかしいで?」
「やっぱりっすか…?」
「自分で分かっとるみたいやし俺じゃ役には立たんかもしれへんけど、一応俺先輩やし、聞くで?」
自然と言葉が出た
いつも以上に気持ち悪いぐらいに素直な財前は少しだけ視線をうつ向ける

「俺、ある人にすげー感謝してるんや。」
唐突に話し始めた彼の話はこんな内容だった


その人はいつも自分よりも1つ前をいっている
技術だったら、きっと負けはしないほど自分が強いはずなのに。
どうしてだか、勝てる気がしない人がいる
こんな性格だから色々と流す事が多いにもかかわらず、いつまでもちゃんと心配してくれる。
ちゃんと自分を自分として見て、その価値を分かってくれている
詳しく語るつもりはないが、そういう事は久しぶりでウザイ割に楽しくてうれしかったらしい
今はそれが当たり前になっていて、いつもの自分では決して言えないけれど、あの人に伝えたい言葉があるんだと

俺は、結構これでも今を楽しんでるんっすわー。だから伝えたい。
あんたに会えたおかげで、俺は今楽しめてるって、会えなくなってしまう前に、色々な人と出会わせてくれて、自分を認めてくれたあの人に」

テニスをしている時にしか見れないような真剣な表情に俺は頷く
「それは、ちゃんと伝えなあかんな。相手は誰なんや?」

そういった瞬間に財前は吹き出す
「もう、なんなんですかあんたはwwwwww謙也さんも馬鹿ですけど、部長も時々びっくりするぐらい馬鹿ですよねwwww」
「失礼なやっちゃなぁ…」
若干吹き出されて驚いたものの呆れながらそう返す

「で、誰なん?」
笑っていた彼はそのままその名前を唇にのせる

”し ら い し ぶ ちょ う”

「…俺????」

頭の中が疑問符で一杯になる
話的にも謙也かて、思ってたから余計や

「部長、ありがとうございました。俺が今を楽しめてるんは、部長のおかげっすよ。」
ふいに微笑んだ彼は財前とは思えないほどに柔らかくて、知らん間にこんな表情もできるようになったんやなー…なんてそんな事を思い少しだけさびしくなった

「…おおきに。俺も財前に会えてよかったわ。これから金ちゃんの世話、大変やぁ思うけど、頑張ってな?」
精一杯笑ってみせると
「なんで部長、そんな泣きそうなんすか…!?」
若干焦ったような可愛い後輩の声
「別にそんなことあらへんww」

「ならいいんすけど…」

そして財前はふいにケータイを取り出して焦ったようにこちらを見る
「部長、まずいっすわー、授業開始時間までわずかっす」
それを聞いて流石に焦ると笑いながら彼は「先にいってください」という
「お前もちゃんと授業受けぇよ!?」
そう叫んであわてて自分の教室に向かった。



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