06



次に黄瀬が目を覚ましたときにはキセキのメンバーが全員集まっていた
「どうして、みんな…?」
やがて彼はぱっと起き上がりあわてたように笑って見せる
「どうしたんスか??俺なら全然平気っすよ??青み、ねっちの、そ…え?」
黄瀬の頬を涙が伝う
それを見て皆が視線をそむける
「ね、黒子っち。青峰っち、何処…?」
すぐ近くにいた黒子に黄瀬は尋ねた
黒子は大きくその表情をゆがめる、それでも彼は口を開けなかった
「ねぇ、緑間っち…?桃っち…?紫原っちも…なんでそんなに、ねぇ…どうしてっスか…?」
誰もがその質問には答えようとしなかった
やがて黄瀬の視線は赤司に集まる
「赤司っち、どうして、青峰っちだけいないんっすか・・?」
赤司はその表情をゆがめる
それでも彼はその口を開いた
「もう、青峰大輝はこの世には存在していない」
「…あはッ、赤司っち何その冗談面白いwwwでも、笑えないっすよ、どうしたんっすか珍しい」
「冗談じゃない。」
「ははっ…いくらなんでも赤司っち、嘘はいけないっすよー??」
「…ッ冗談じゃないんだよ涼太っ!!お前、今自分がなんで泣いてるのか分かってるか…?」
「泣いて…?」
黄瀬は自分の頬を流れる涙に触れて驚いたように目を見開く
「涼太、お前の目の前で、大輝は何かを伝えただろう…?なんて言ったんだ…?」
「何の事っすか…?」
「お前が最後の最後一番近くにいたんだよ」
「何の、冗談っすか…?」
「大輝は、お前が明けていた窓から転落して死んだんだ」
「・…っっ!!!」
その言葉に黄瀬の脳内に嫌な映像がフラッシュバックする
目の前で彼らしくない笑み、言葉
消えた、体温

「っぁ・・・・れ…?なんで…っ…?」
「涼太、お前の体はもう身を持って体感してる、目の前で大輝は落ちたんだ。」
「っうわぁぁぁぁッぁぁつっ!!???」
自分でも信じられないほどの悲鳴が出た
そして、赤司はまじめな表情のまま口を開いて辛抱強く尋ねた
「最後に大輝はなんていったんだ?」

しかし壊れた様に狂ったように黄瀬は叫び続ける
やがて見かねた黒子が口をはさんで赤司の詰問を止める
「赤司君、まだ今は無理ですっ…!僕たちですら混乱しているのに、目の前で見た黄瀬君に、よりにもよって一番大切な人に拒否られて1週間逃げるように過ごしてきた彼の目の前で死んだ最愛の人の事を尋ねるなんて、無茶ですっ…!!」
「それでも、聞かないとだめなんだよテツヤっ…!!」
赤司は頑として譲ろうとはしてくれなかった
やがてぽつりと緑間が口を開く
「赤司、今は無駄だろう、これ以上は時間の無駄だ、せっかく尻尾がつかめたんだ早くすべてを明らかにしてしまおう」
その言葉に赤司は不満そうな表情を浮かべる
「赤司、今は黄瀬の事も考えてやるべきなのだよ」
目の前で壊れたように泣いていた姿もなりをひそめ中をうろうろとさまよっている黄瀬の視線
完全に黄瀬は壊れてしまっているように見えた

「黄瀬君…?」
黒子の問いかけに彼はぼんやりとしたまま

笑った

「あはっ…あはははははっ!!!」
「きーちゃん…!?」
皆がギョッとする中桃井がそっと黄瀬に触れる

「きーちゃん、もう、いいよっ…?」
「あはっ…何言ってんすか桃っち」
「もうっ…大ちゃんに会えないから、もう泣いていいんだよっ…?」
その言葉に黄瀬の顔から表情が抜ける
やがて黄瀬はその口を開く

「…ほんとバカっすよっ…俺だけ、また置き去りだっ…っ!!」
その言葉に誰が声をかけられただろうか
失う辛さを身をもって経験して、なんとしても戻そうと奮闘していた赤司、緑間、紫原
黄瀬の事を心配し最後まで黄瀬と青峰の事を考えていた桃井と黒子
そして、自分のせいで一番大切な人を失い、目の前から消えてしまった彼

「また、俺だけっスよ。いつだって、一人で先に行って、勝手に満足してっ…っ!!!」
聞かせるつもりも口にしているつもりもないのだろうが黄瀬の口からはまるで今までの分が堰を切ったように溢れだす
「いつも、あの人ばっかり先に行って、俺はおいてけぼり、いつもいつも、俺にはっ…」
「黄瀬君…」
「どうして、俺なんて選んだんっすか、あの時の俺をもっとこっぴどくフって遠ざけていれば、青峰っちはこんなことにはならなかった……全部、俺のせい……?」
「違うっ!!!!!」
まるで悲鳴のような黒子の声が上がる
それでも黄瀬はぼんやりとしたままうなずく
「そっか…俺のせいで、…・・だから?」
「黄瀬君っ!!」「きーちゃんっ!!」
黒子と桃井がその名前を呼ぶ、赤司も緑間も紫原も言葉を失っていた
「そっか、やっぱり俺のせいか、いいよ大丈夫、ごめんね青峰っち、俺のせいで、ごめんね。」
「…っ涼太っ!!!」
耐えきれずに赤司の声がぶつぶつと呟く黄瀬の言葉を止める
「赤司っち、俺バスケやめるっスわ」
「!!????」
その場にいた皆に戦慄が走る
「俺のせいで皆の大事な仲間殺しちゃったごめんね?」
そう言った黄瀬は、微笑んでいた。まるで何事も無かったかのように
「赤司っち、俺ね青峰っちに言われたの」
「な、に・・・っを・・・」

「”ぜーんぶお前のせい” だからもう俺はバスケをしないっすよ。もう大好きな人たちが増えたら困る。だって青峰っち言った”お前の大切な人が死んでいく姿をそこで見てろ”って。だったら、もう俺はバスケをしないよ。黒子っち、桃っち、紫原っち、緑間っち、赤司っち。ごめんっス、後…ありがとう、大好きだったっスよ」
そう言って微笑んで見せた黄瀬
皆が茫然としたまま立ち尽くしていた
今までで一番綺麗な微笑みだったのだ
まるで、全てを受け入れてもう必要ないと、すっぱり断ち切ったかのような
「涼太…本気でバスケを、バスケ部を辞めるつもりか…?」
かろうじて固まったなかでも赤司は口を開いて問いかけた
「そんな顔しないで赤司っち。赤司っちの大事な仲間、一人俺のせいで亡くしちゃったのは謝るっスから」
「お前は、俺達の仲間…じゃないのか…?」
「いやだな―、何言ってるの、だって俺が青峰っちを殺したんだよ、昔からいた青峰っちを殺した俺が仲間?そんなの、そんなの…みんなが可哀想っス」
「涼、太…?」
「もう、なんでそんなに驚いてるの、いいんっすよ。これ以上みんな巻き込みたくない。もし青峰っちが俺と近くなりすぎたせいで死んだなら、やっぱり俺はここにいちゃいけないと思うから」

黄瀬の脳内はただ笑うという事に必死だった
本当はすべてなんて理解できていなかった
それでも分かっている事は「これ以上みんなと一緒にいたら、今度こそ皆いなくなっちゃう、自分のせいで皆がいなくなる」その1点だけで、黄瀬は必死だったのだ
普段ならゆらぐ瞳に気づくはずの赤司が気付かずに呆然と立ち尽くしている
だから余計なのだろう
黄瀬は笑って見せる
「ごめんね、みんな。バイバイっス」

そしてその日を境に黄瀬はバスケ部のメンバーの前から姿を消した
学校でなら見かけるだろうからと目論んでいた彼らに告げられたのは暫く彼が学校を休むとの事
彼らは茫然と日々を過ごしていた




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