02


「青峰くんは黙ってください(黒子は絶対零度を発動した!)」
「「……」」
二人とも黙りました
腕の中で真っ赤で固まっている黄瀬を引っ張るとやっと我を取り戻した黄瀬
「あ、えっと…」
「黄瀬君、そろそろ帰りましょう?さすがにこれ以上は近所迷惑ですし」
黒子の言葉に桃井が頷いたのを見て黄瀬も頷く
それからそっと黒子に腕を掴まれたまま青峰の方向を振り返る
「バカじゃねーの…」
そう言って恥ずかしそうにくるりと前を向いた黄瀬
不服そうな表情をしていた青峰はぽかんとした後ゆっくりと後ろから寄っていき二人に抱きつく
「ったくよぉーww」
「なぜ僕までなんですかはなして下さい」
「照れんなってww」
「違います、君は少しデリカシーというものを学ぶべきだと思います」
そう言って腕から何とか逃れた黒子
しかしその時桃井の悲鳴が響く
「まっ!!テツ君!!」
「え?」
目の前には大型トラック
「え…」
「黒子っちっ!!」
「っ!!?」
突き飛ばされた黒子を何とかキャッチした青峰
「うぉっ!!??ってあの馬鹿っ!!おいテツ頼んだぞ、さつきっ!!」
「えちょ、大ちゃんっ!!?」
黒子を無事青峰の元に突き飛ばして一安心していた黄瀬のすぐそばまでトラックが迫る
「っ!!黄瀬っ!!!!」
その体がいつもの温かさに触れた瞬間
彼の体もまた誰かに突き飛ばされそして鈍い音が響く
「え…?青峰…君?」
「っ大ちゃんっ!!!!!」
桃井の悲痛な叫び声が響く
トラックと、正面衝突は免れたものの黄瀬は突き飛ばされたときにどうやら体をぶつけたらしい
それでもふらふらとしながらその声の元に視線を向けて…
「あお、・・・み、ね・・・っち・・・?」
真っ赤なインクみたいにきれいな赤の中に愛しい人の姿
「どうしよう、どうしよう、どうしようっ!!??」
「っ、落ち着いてください桃井さん!!早く救急車っ!!」
「ど…うし…て…?」
「黄瀬君っ!!??」
黒子っちの声が聞こえる、どうやら彼は無事なようだ
「きーちゃんっ!!??」
「よかった…二人が…無事で」
ぐるぐると回る視界の中で彼は安心したように息をつく
「あれ…青峰っち…何処…?」
そして黄瀬の体はそのまま崩れ落ちる様に力を失った

真っ暗になった世界の中で彼は愛しい人の声を聞いた
「お前は、俺のもんだよ…な…?」
今更何言ってんっすか、さんざん好き放題にしといてwwそう笑って言ってやりたいほど彼の表情は苦しそうで
それでも黄瀬の体は言う事を聞かず言葉にする事が出来ない
手を伸ばす事も出来ず、ただその姿を見守る
「悪かったな」
待って青峰っち、どこに行くの
待って…
…って、待ってっ!!」
「黄瀬君っ!!??」
目の前に薄い水色が広がる
「え……??」
「きーちゃんっ!!」
「黄瀬君分かりますかっ??僕ですっ!黒子テツヤです!」
「黒子っち…?」
あまりにも必死にそう言う彼にそう呼ばなきゃいけない気がして黄瀬はいつものように言葉を発する
「よかっッたっ…っ!!」
「え?え?」
「っっ!!どうして僕なんかっ!!」
「待って、テツ君!!落ち着いてっ!!」
桃井のまるで悲鳴のような声に黒子はそのまますぐ傍の椅子に座りこむ
黄瀬はふらふらする視界で周りを見わたす
「此処…?」
その質問に答えるかのように病室のドアが開く
「病院だよ、涼太。」
「赤司君っ!」
「よく頑張ったね、テツヤ、もう大丈夫だから」
「っ!!!」
「桃井もよく俺に連絡してくれた、おかげで大輝の命も涼太の命も消さずに済んだ、礼を言うよ」
「っ!!ごめんなさいっ!っ…守れ、なっ…くて…っ!」
「お前は守ったよ、だから今みんな生きてる。うつむくんじゃない、大丈夫だ」
「っ!!」
唐突に現れた赤司に黒子と桃井の二人はまるで緊張の糸が切れたように泣き出す
そして黄瀬はその意味がよくわからずにいた
「病…院…?」
泣きじゃくる二人にいつの間にいたのかすぐ後ろにいる紫原と病室の外にいろと赤司は伝えて黄瀬に向き合う
「そうだよ、涼太、その様子だと俺達の事は覚えてるみたいだから簡単に説明する」
帰り道にトラックが突っ込んできた黒子をかばい黄瀬がトラックの前に飛び出した事
そして黄瀬を守る為に同じようにトラックの前にとび出した青峰
青峰に突き飛ばされた時思いっきり頭をぶつけて医者から記憶が少し混乱しているかもしれないと伝えられている事
そして
「大輝は今…集中治療室にいる」
「え…?」
「目さえ覚ましてしまえば後は心配ないらしい、お前と同じように強く頭を打っているし実質無鉄砲にもほどがあるがトラックと正面衝突に近いはずだったらしいが持ち前の勘と反射神経のおかげかかすった程度で終わったらしい」
「じゃぁ…無事なんスよね?」
祈るようなその表情に赤司は頷く
「目さえさめれば、な。ただ、打ち所がかなり危ないラインらしくて多少の記憶障害や運動神経に乱れはでるかもしれないそうだ。ただし、医者の話によるとそれもそこまでの物ではなく、体を動かしているうちに元に戻る程度の物だから心配はしなくていい」
「よかった・・・・」
「いい訳あるものかっ!」
そう言って痛む筋肉を動かして微笑むと赤司の怒鳴り…というには余りにも悲痛な声が聞こえた
「赤司…っち…?」
「涼太、お前体が痛いだろう、固まっているだろう?」
「え?」
「ためしに腕動かしてみろ」
言われたとおりに動かそうと力を入れてみると
「っっ!!??」
「痛いだろう、はってるんだよ」
「どう言う…事っスか…?」
「いつもみたいに帰り道だったから油断してたんだろう、クールダウンし切れてなかったんだ」
「でも、たった数時間かそこらじゃ…」
「……涼太、違うんだ」
「え?」
「お前は丸2日ずっと眠り続けてたんだよ、一時的にお前も大輝と同じく生死の境を彷徨ってたぐらいには危険な状態だったんだ!これじゃ、僕が普段他の障害から守っていても意味ないじゃないかっ!!」
そう言った赤司の瞳はわずかにうるんでいて
不意にその赤司の肩に手が置かれる
「赤司、そこまでなのだよ」
「真太郎…」
「あまりこいつを責めても仕方ない、今は大人しくあのバスケバカが戻ってくるまで待っていればいいのだよ」
「…悪かった、涼太」
「そ…そんな…」
「黄瀬、お前も少しは状況を整理したいだろう、しばらくしたら戻ってくるから、少しここで待ってるのだよ」
緑間のその言葉になすすべもなく黄瀬は頷く
そう言って彼は再び病室に一人きり残される
どうする事も出来ずに黄瀬はただ病室の窓から空を見つめる
今日の空は皮肉なぐらい綺麗に真っ青で
いつもなら黒子っちみたいに淡くて優しい色なのに、今はただ青くて
いやでも彼にとっての最愛の人の事が頭をよぎった
「どうして…俺なんかかばっちゃったんスか、青峰っちっ……っ!!」
自然と涙は流れた、いつもなら「お前、ほんとに泣き虫だよなぁ〜www」
そう言って呆れながらも抱きしめて、その瞼にキスを落としてくれる彼がいない
早く、目を覚ましてまた呼んでくださいっスよ…
また、一緒にバスケするっスよ?



*prevnext#




「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -