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騒がしい声で彼は目が覚めた

「黄瀬ちーん、お昼行くよ〜」
不意に後ろからかかった声。聞こえたのは紫原の声
自分の意識がはっきりとしだす
「帝、光…?」
「どうしちゃったの黄瀬ちん??ボケた??」
「紫原っちひどwwwwww」
「何でもいいけど、早くいかないと赤ちんに怒られるよ〜?」
そう言って紫原は黄瀬を引きずって歩き始める
見覚えのある風景
「黄瀬君、なんで紫原君に引きずられているんですか?」
「黒子っち…?」
「はい、そうですけど」
「何をこんな廊下のど真ん中で遊んでいるのだよ」
「緑間っち…?」
「どうした黄瀬?」
「どうかしたんですか、黄瀬君?」
「さっきからボケてるみたいよ黄瀬ちん」
「紫原君、黄瀬君のボケは今に始まった事じゃないですよwww」
「そっか〜www」
「ヒドッwwwww」

全てが懐かしい、俺の大好きな風景

後は…

「何でもいいが赤司が怒る前に早く屋上に行くのだよ!!!」
「そうですね」
「だね〜」
そう言って3人に囲まれながら期待を胸に屋上に向かう

屋上の扉を開けると



ずっと見たかった、青
「黄瀬涼太」が会いたいと願い続けた大好きな、その人の姿
「よ〜、黄瀬wwww」
「青峰、っち…!!!!」
彼はそのまままっすぐに青峰の元に走っていく
「おぉ???!!!どうしたんだいきなり、てめ―は!!!」
思いっきり抱きつく様にとびつくと青峰はそのままなんとか黄瀬を驚きつつも支えてくれる
「やっとっ…!!やっと、会えたっ…!!!」
「はぁ??いつも会ってんじゃねーかwwww」
そうやって馬鹿みたいに笑う青峰の姿に黄瀬は涙をこらえきれない
「青峰っち…ッ!!青峰っちっ…!!!!」
「おっま、なんでいきなり泣いてんだよ!!!??てか相変わらず綺麗には泣けねーんだなwwwwwぶっさいくwww」
「っ…!!青峰っち…!!!」
”好き”
その言葉を告げようとした瞬間赤司の悲鳴が聞こえた

「まだ駄目だ涼太っ…!!!!!!!!!!!」
後ろを振り返ろうとした瞬間
目の前で笑っていた青峰の表情が一変する

歪な、彼らしくない笑み

「っ、真太郎っ!!!!!!!」
「…っ!!分かっているのだよっ!!!!!!」
後ろで二人が動く気配がした

「ほんと、”君”が死ぬか、”この人”が死ぬかしか未来ないんだよwwwwwどんだけ”この人”に死んでほしいの???」
「青峰」は話し続ける。黄瀬の口は言う事を聞かなくなったように固まっている
「ち、が…」
「黄瀬涼太、君が近くなったら、それだけで“青峰大輝”は死ぬ運命なんだよ。ね、どっちがいい??」
「な、にを…」
掴まれた腕、三日月形にゆがめられた唇
青峰らしくない言葉

「ね、一緒に、死ぬ…?」

強い既視感
見覚えがある、気持ち悪い
この笑顔、言葉づかい

「涼太っ…!!!!!!!!!」
その声が聞こえた瞬間青峰の体は一気にフェンスのそばまで走っていく
そしてそのまま

落ちた。

俺の腕をつかんだまま
まっさかさまになりそうなところを、変わらない腕が掴む
落ちていく愛しい人の姿
その表情はただ茫然としていて

「青峰っちっ!!!!!!!」
「見るなッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
赤司の怒鳴るような悲鳴に反応してそちらを向いた瞬間

嫌な音、肉のつぶれる音、骨が砕ける音
体がたたきつけられた音

「あ、おみ・・・」
「涼太っ!!!!!」
その声に体がまるで習慣づいているかのように動く事を許さない
そうしている間に、黄瀬の腕をつかんでいた緑間の元に紫原が現れ黄瀬の事を引きずり戻す

「ま、せっかく会えたの、に…!!!!!!!!!」
「涼太っ!!!!!」
「どうして!!!!どうして一緒に死なせくれなかったんっすか!!!!!!!」
まるで悲鳴のようにその言葉は口をついて出た

「どうしてっ…!!!赤司っち!!!!!俺はもう、青峰っちを一人になんてしたくないのに!!!!!!どうしてっ!!!!」
口にしてしまえば簡単だった
「俺は、青峰っちを探してずっと色々世界を巡ってるんっすよ!!???やっと会えたのに!!!もういっそここで一緒に死にたかった!!!青峰っちのいない世界なんて!!!もう!!!!「黄瀬君!!!!!!!!!!!」
黄瀬の言葉を止めたのは黒子の強い、強い、悲鳴のような一言だった
「黒子っち、なんで」
「言いすぎ…です。赤司君が今、どんな表情をしているか、君には見えてますか?」
そう言われて赤司の方向を振り向いた黄瀬は動揺した
「すまない…っ…すまないっ…!!!!」
赤司は表情をゆがめて、泣いていたのだ

黒子の方を向く
緑間も紫原も複雑そうな表情を浮かべていた
そしてその後ろには…
「桃、っち…?」
「きーちゃんっ…」
「なんで、泣いて、青峰っちの、見た…?」
「きーちゃんっ…!!!っ…!」
彼女はただ涙を流しながらも黄瀬の事を呼び続ける
やがて、赤司は泣いているままの顔を黄瀬の方に向ける
「絶対に、助ける。だから頑張ってくれ、あと少しだけっ…!!」
そう言った瞬間皆の意識が一瞬止まったかのように皆の眼がどこか遠くを見る
「みん、な…?」
やがて、戻ってきた視点から、赤司はゆっくりと俺を見つめる
「眠ってしまえ、黄瀬」
その言葉がトリガ―になったように、この世界の「黄瀬涼太」の意識は強制的にシャットアウトされた




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