03



そんなある日開くはずのない扉がふいに開いた
「久しぶり…」
その声はわずかに震えていて、でもその姿は前に見たときよりもわずかに幼くなっていた

「残夏、っておまえだろう?」
ふいに彼の視線が下を向いた。どうしていいかわからなかった僕はその場で硬直していたら彼は、声を震わせながら言った
「俺、記 憶受け継いでるんだ…、前の、俺から。ごめん、あのとき、まるで責めるみたいに…、ごめん…っ!」
そう言って肩を震わせる彼の瞳には涙がたまっていて、その時僕は生れてはじめてやらかした
頭の中には視えてしまったあの時がフラッシュバックしていて、走馬灯のようにあの時の彼の表情が仕草が言葉が視えた物がいっぱい故に恐怖に支配されていて、彼が今その幼い状態でどんな表情をしてどんな気持ちでここに来ているのか考えてやる余裕もなかったんだ
「僕が、気持ち悪くないのかい?勝手に視られるかもしれないのに、僕の処にどうして来たんだい?前の自分がそんなに許せなかった??僕に、怨まれたくなかった??」
その瞬間

”がんっ”

脳に直接打撃が来た、殴られた…らしい
彼は震えながらも必死に言葉を紡いでいく
「俺はっ…!お前の事、本気で友達だと思ってるから…っ!!お前が、苦しんでたの気付けなくてっ、めちゃくちゃ後悔してんだよ、過去の俺っ…!!だから、おれはそいつの分まで、俺の意思でっ…お前とっ…仲よっ…??残…夏…?」
ふいに名前を呼ばれて、僕はふと我に返る
「どっか、辛いの…か?」
首をかしげようとして気がついた、そうか、僕今、泣いてる…のか…
「大、丈夫だよ、大丈夫、ごめんね。」
そう言って体を動かそうとして、ふと気付いた
いつの間に、僕はこんなに彼の言葉で救われてしまうほど脆くなっていたんだろう、と
いつの間に、彼の言葉に涙していたんだろう、と

「ごめん、今日はもう帰って。」
そう言ったら、彼はすごく不安そうになって口を開こうとする前に自分でも驚くべきことに言葉を重ねていた
「ちゃんと、食べれるようになってから、また会いに行ってあげるから」
「残夏っ…」
「それと、仮にも僕のほうが10以上年上なんだからさん付けしようね」
「っ…!バーカっ!早く元気になれよっ!そんでっ、また笑いながら会いに来いよっ!」
そう言って、彼は少し名残惜し気に笑いながら扉から出ていく

でも、その時の僕の身体は自分でも限界が来ているのがよくわかるほどボロボロだったんだ


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