02



それ以来、僕は人とかかわっても極力話をしないようになる
すると今度はひそひそとささやかれるんだ
僕は百目の先祖返りだから何も言わなければ視えていることが悪いことだと勝手に勘違いをされて、そして虐げられる
そうして身も心も辟易していた時に「彼」に出逢った

「お前が夏目残夏…?」

ふいにかけられたその声にはまだどこか幼さを残していて、そんな声の主の表情もやっぱり幼さを残している
それが昔の僕と昔の渡狸の最初の出会い
初めはとても警戒していた、聞けば彼も先祖返りの一人であるとのこと
彼はびっくりするぐらい明るくて面白い子だったよ
それこそ、今まで虐げられてきた僕ですらうっかり心を許してしまいそうなほどに
そして、なんだかんだで一緒にいるようになった
彼をからかって遊ぶと僕は自分が楽しいことに気付いたからだ
そして、僕はまた生まれ変わったら彼の隣りにいるようになった
彼の記憶は受け継がれるものではなかったから、毎回初めましてと同じ表情を向けられる、けれどどこか違った彼を見るのは少しさみしい気もしていたがあまり気にはしていなかった
そして、彼に会って何度目かの転生した時に僕はまた視てしまうのだ

そのころには何度も同じ轍を繰り返し踏みたくなくて、だいぶと表情をコントロールできるようになっていたのだが、身近な人間相手ではやはり素のほうが頭をもたげてしまうのだ
だからその時もきっと分かってしまったんだと思う

「それおかしいでしょって…っ!?」
「残夏?どうした?」
「…なんでもないよ〜w w」
「残夏?…!視えたんだろう!?何が視えたんだ!?」
そう静かに問う彼をまっすぐ見ることができなくて、やがて彼は悲しそうに表情を曇らせる
「俺を信じられない?だから、言えないのか?」
そうじゃないと僕が言う、けれどもう1人の僕が問いかける、何が違う、おまえはまた不吉なものを見たことがばれて虐げられるのが怖いだけだろう?せっかくできた楽しみがなくなるのが怖いだけだろう?

否定が、できなかったんだ
それ以来、彼は僕に会おうとはしなかったし僕も彼に会うことができなかった。
それは久しぶりにひどく虐げられていた昔の僕を思い出させて、その日から食事もまともに取れなくなっていくほど、衰弱していったんだ
ただ、あのおびえたような、凍ったような、存在を否定するような視線を、そばにいた彼に向けられるのが怖かったんだ


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