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僕の記憶は遥か遠くまで遡る

今のこのふざけたデフォルトになるまでの話をしよう
こんなに静かなテンションの僕はあまり見ないからきっと誰だかわからないかもしれないね
じゃぁ、いつものテンションに戻そう

今の僕になるまでにはぁー、結構色んな事があったんだよぉ〜??
その記憶の多くを、というかもうほとんどを抱えて生きていくのにはこれくらいはっちゃけないとやっていけないんだからっ☆
僕らの存在は基本的に無限ループだからねっ☆

「夏目残夏」
それが百目の僕に与えられた名前
さぁ、昔話を始めようかっ♪聞いていてあまり楽しいものではないかもしれないけれど、僕だってたまには感傷に浸ってみるという自分をやってみたいんだから、ちょっとだけゆるしてねっ☆


今の状態より過去の自分
本来なら知らずに生きていくその自分を僕は百目という先祖返り故に知っている
今の僕からは想像もできないかもしれないけど、最初の僕はとてつもなく不器用でどうしようもなく力の制御ができてなかったんだよ

「残夏っ!」
今もそう呼ぶ彼の声に僕は救われていたんだ

僕は、最初”視える”ということのおかしさをちゃんと理解していなかったらしい
それは、時々視えるもので視ようとしても下手すれば視えないかもしれない様な曖昧なビジョン
何かを簡潔に伝えてくれることが必ずしもあるわけじゃなくて、それこそバカみたいにわけのわからないものが見えていることもあったんだ
いくら先祖返りとはいえ見た目は普通の人間と長袖を着てさえいれば変わりはなかったし、僕自身にもどこかそういう感覚があったんだと思う
当時の僕は純粋に物事を見ていたようだから
そんなある日、事が起きた

いつものようにふと友達をからかっていた時に、不意に視えたそんなあの日
その時の僕は馬鹿だったみたいで何も考えずに視えたその事を口にしてしまったんだ
「…、君、車には気をつけたほうがいいよ。」
「どうしてだよ??」
「だって、死んじゃうから。」
そう言ってこともなげに笑うと、その友達は青い顔をしたまま悲鳴をあげて僕の前から逃げて行ってしまった
それはそうだよね、僕とは違って記憶を受け継ぐ可能性のが少ないんだから、死ぬってことは潜在的な恐怖に違いない
それをいきなり笑って告げられたら、困るし怖いよね

案の定僕のその言葉は瞬く間に騒ぎになって、結局大人たちが出てくることになる大事件に発展してしまったんだ。


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