03
そんなある日の事
主治医が見ず知らずの白衣の若者を連れてくる
「お待たせ、残夏」
ふいにあげた顔は懐かしい彼で
主治医が今度から彼が僕の担当を手伝うと伝えて去って行った
「やっと来たね、僕を生かしてくれる方法は見つかったの?ww」
「もう少しでたぶん見つけられると思うぜwwだから、頑張れよ?俺との約束忘れんな?ww」
「分かってるよ、そういう君は僕との約束1回破ってるみたいじゃないか…。」
「げ、お前また視たのかよっ!!」
「しょうがないでしょーww視たくて視えるもんじゃないんだからーww無茶はこれからこそ禁物だからね??」
「はー…はいはい、わかってるっつの。」
そう言って笑って見せた彼はそれだけ話すと仕事に戻ると言って病室を出て行った
それから、今までの分彼が病室にくるたびに僕はとことん彼をいじり倒していた
彼の事はそれからあまり視えなくて、自分の身体と一緒に衰弱していっている気がした
それでも、僕はどこかで楽観視していたんだ
だんだん体に力が入らなくなって起き上がることができなくなったころに、彼は病室に再びやってきた
「残夏、後2日だ。後2日でお前は俺が治す許可がもらえる」
そう言って嬉しそう報告した彼は笑う
その瞬間、今までにない赤が頭に浮かんだ
その真ん中にいたのは、今目の前で笑っていた彼の姿で…
「どうし…て…?」
「あ、やべっ!そろそろ時間だわ、また来るな、残夏っ!!」
そう言って彼が立ち去ろうとした瞬間に再び頭に浮かぶ赤
倒れているのは彼で、泣いてる…
「ま…って…っ!渡狸っ!待ってっ!!行っちゃだめだっ!!」
伸ばすことのできない手が初めて悔しいと思った
扉を閉めかけたその後ろ姿に再び重なる赤
倒れた状態の彼、周りの喧騒
僕はその場にいないはずなのに…
彼は宙に手を伸ばす
「ご・・・めん…な…?」視えたその景色で彼の唇を読んでいく
「約…束…守れ…なく…て…っ?」
「い…き…ろ…?会え…て…よ…か…った?あり…が…とう…?」
”ごめんな、約束守れなくて 生きろ 会えてよかった ありがとう”
「ー…っ!」
立ち上がれずに彼のもとに行けない自分がどうしようもなく悔しくて、つらくて
そしてやっぱり彼は、僕と一緒にいることで死期が早まるのかもしれない…なんて変なことを思った
僕の能力がここまではっきりと視せたことだ、近いうちに現実になる
「どうしてっ…」
その日の僕は完全に人目を忘れて唇をかみしめていた