01



”どうか、次の僕は君を泣かせませんように…”


君の傍で…


僕は再び転生を繰り返す
意味もなく記憶を受け継ぎ、前の僕の感情から少しずつ学んでいく
前の前の…少し前の僕が願っていたことは結局叶わなかった
今まで近くにいすぎたせいか、ここ最近の転生後には「渡狸」という少年には会わないままで終わっている

そして今の僕は昔の僕から学んで、だいぶと人付き合いがうまくなった
ほとんど自分を晒さないようにしてさえいれば、周りは僕を普通の人として友達として見てくれたし、僕もその感覚は嫌いではなかった
ただ、少し前の僕が願っていた少年とは意外なところで出会うことになる


いつも通りの生活を送っていた僕だったが、体は人間より丈夫とはいえ今回の僕は少し病弱気味だった
そのせいか、病院に行く回数が通常よりも多かったのだ
それは、僕が大学生も終わりに近づいた秋の頃

「〜り様、渡狸卍里様」
ふいに耳に入ったその名前に唐突に顔をあげた
「わ…た…ぬき…?」
呼ばれたそのカウンターに行ったのは高校生ぐらいの男の子で、その姿を見た瞬間前の僕の記憶が重なった
「渡狸…彼、か、おめでとう、やっと会えたよ…」僕はその場から離れ彼のもとに歩いて行く

「ハロ〜、君渡狸君だよねっ??☆」
不意に話しかけられて驚いたような風貌は昔の僕が視ていたものとやっぱりほとんど変わらなくて
「だ、だれだよ、お前」
「君の、昔々の大親友だよっ☆」
あながちウソではない僕ではないけれど過去の僕も僕だから
案の定、こいつ何言ってんだ的な顔して1歩後ろに下がられた
「待ったくぅ、ひどいなぁ〜…、僕を忘れ、る…
くらっとした世界
「!?おいっ!?」
耳に響く彼の声、体に触れるその体温
「君は、ずるいよっ…」
とっさに支えてくれたのだろうが、彼もあまり力はないらしい
その場にへたり込んでしまう
「おい!大丈夫かっ!?」
必死に呼ぶその声に応えようと口を開くが言葉にする前に僕の意識は途切れた

「…………ん…」
目を覚ました時に目に入ったのは白い天井で、徐々に記憶と意識が戻ってくるのを感じながら体を起こす
「起きたか?」
ふいにかけられた声に声の方向を振り返ると
「なん…で…?」
そこには焦がれ続けていた彼の姿があった
「俺が回復状況でよかったなwwwお前、あの後名前も聞いてねーからとりあえずベッドだけ貸してもらってたんだけど、全然起きる気配なくて焦ったんだぜ??ww」
笑って見せるその姿は変わらなくて、でもそれでも焦がれていた彼じゃない事を痛感する台詞が中には含まれていて
「君は変わらないんだね…」
「…おまえは、倒れる前も言ってたけど俺を知ってるのか??」
そう聞いた彼の表情は困ったような表情で
「君は先祖返り、だろう?渡狸、くん」
そう呟いた瞬間彼は驚いたように目を見張る
「なんで知って…お前も、なのか…?」
「そうだよ…。僕も先祖返りだ」
そういうと彼はおもちゃをもらった子供のような表情で興味を持ったように聞いてくる
「俺は豆だぬきの先祖返りだけど、おまえは何なんだ?」
昔の僕に蓋をしなくちゃいけないのに勝手に悲鳴をあげている心がいた
純粋に知らないことを聞いているだけなのにどうしても僕にはその表情が、初めましてがつらかったのかもしれない
何度も経験していたはずなのに
「僕は…百目の先祖返りだよ。だから、君の過去や未来や、これからなんかも視えるんだ」
そう言っていつも以上に笑顔を作る
「誰だって人には視られたくないものがあるだろう?だから、もう僕とは関わらないほうがいいよ。今日はありがとう、いきなり迷惑かけちゃったね。それじゃぁ。」
そう言ってベッドから降りて立ち去ろうとした僕の身体を無理やりベッドに押し戻す
「何…?」
「なんでそういうこと言うんだよ。確かに視られたくないんことはあるけどでも、絶対視ようとして視えるものが視えるわけじゃないんだろう??」
「…!!どうしてっ…!!」
「え…?」
「そう…だよ、僕は確かに視たいものが必ず視えるわけじゃない。でもその性質を知っているのは僕と…彼だけなのに…っ…どうしてっ…?」
「俺、え?…なんで知って…?…いたっ!!」
ふいに頭を抱えてしゃが見込んでしまった彼に僕はあわてる

「ごめん!!大丈夫だからっ!!君は今の君でいいからっ!!」
そう、君は今のまま僕の事なんて忘れて幸せに生きてくれればいいんだ
先祖返りでも記憶が受け継がれない人に前の自分を教えるのは、思い出させるのはご法度
そして、頭を抱えてうめくのは戻りかけてしまう、しかも強制的に。その証拠
戻らなくていい…!
その言葉が届いたのか、やがて彼は首をかしげながら平気そうに立ち上がる
「なんだったんだ…?」
「君には必要のないものだよ☆だから、忘れちゃえ?」
「…wwお前、ほんとに変な奴だよなwwなぁ、名前教えてくれよ?俺は、渡狸卍里」

知っているよ…、君の名前は知ってる…

「僕ぅ〜?僕の名前は秘密だよっ☆」
「なんでだよ?」
お願いだから、これ以上かかわっちゃいけないんだ
僕に深くかかわったら君はまた…っ
「いいじゃんかよ、せっかく見ず知らずのお前かいほーしてやったんだぜ?名前くらい聞かせろよ」

「…残、夏。」

「え…?」
記憶のある僕が耐えきれるわけがなかった、純粋なその瞳を拒絶なんてできるわけなかったんだ
「夏の目に残る夏と書いて夏目残夏、って言うんだよ、渡狸くん」
「そっか、残夏かっ♪じゃぁ、今日からお前は俺の友達なっ♪」
「えっ…?」
楽しそうに笑う彼に僕はどうしていいのか分からずにただただ頭の中で動揺を収めようとしていた
「…ねぇ、君バカなの?僕、君にもう関わらないほうがいいって言ったよねっ?」
自分でも驚くほど冷えた声が出た
「馬鹿ってなんだよっ!!おれは馬鹿じゃないっ!」
「そうじゃなくてっ!」
「お前は俺に言ったのはあくまでお前の意見で俺の意思じゃないだろ?俺は、おまえが気に入った。だから、俺はお前の名前を聞いたしお前の友達になる。それに、なんでかしらねーけど初めて会った感じがしねーんだよなww」
そう言って笑う彼はもう彼にしか見えなくて
「やっと、君の願いがかなえられる…いいよ、友達になろっかっ♪」
「…、なんだ、ちゃんと笑えんじゃんwwお前、そっちのが自然でいい、残夏、よろしくなっ♪」

そして僕たちは再び出逢った
渡狸と別れた後そのまま診察を受けて悪化していることは告げられた
しばらくしたら入院状態になる可能性もあるから覚悟して欲しいと
元々分かっていたことである故に驚きはしなかったが、予想よりも進行が早いことに少し驚かされた


それから、僕は渡狸の傍にいるために彼と行動を合わせるようになった
一緒にいる時間は、かつての僕が幸せになってほしいと焦がれていた彼と一緒にいるような錯覚を起させるほどに楽しいもので、僕は自分でも気付かないうちにお茶らけたキャラが壊れつつあった

そんなある日の事だ



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