今日も一日仕事で疲れた自分
ため息をつきながら帰りながら思わず呟く

「どっかに黒ファイ落ちてね―かな…」

そんなことを願いながらなんら変哲のない帰路についた私

何か特別なことが起きるわけでもなく
偶然白猫と黒ネコが仲良く散歩している微笑ましい姿
なんて、黒ファイ妄想に使えそうな風景があるわけでもなく

いつものように

そう、いつものように帰宅した私
(さびしいさびしい一人暮らし)


「お帰り!!」

そう言ってドアを開けた先でふわりと微笑んだ金髪の青年を見るまで私の日常はいたって普通でした

後ろにいる黒くてでかいのを見るまで
なんら変哲のない日常の中毎日萌えで補給するしかない彼らを見るまで


「今日から、君の家に住むことになったんだ、ファイって呼んでね〜」
目の前で告げられた名前


「え…?」

「ほらぁ〜黒様もちゃんと自己紹介!!」

「…黒鋼。今日からお前の家にこいつと一緒に住む」


「・・・はい??????」


えっと目の前のこの方々は何を言っているんでしょうか、ってかまさかだれが我が家に帰ったら黒ファイに会えるとかえなに夢??夢なの??そろそろ課長あたりに起こされるとかそういうオチですか??いや夢でもこれはうまい、黒ファイと同居、ちょっと待って私もしかして家主、こいつらに何でもさせていい感じ???おっほ―!!!!」

「えっと…黒様…この人怖い」

「・・・・」

おっといけない興奮しすぎて全部口から出ていたらしい
黒鋼、と名乗る黒鋼さんそっくりのイケメンににらまれてしまった

一つ大きく深呼吸をすると

私はひとまず落ち着きを取り戻した


いや正直落ち着いてなんかいられないのだがこれ以上醜態をさらすわけにもいかない
ひとまず彼らをリビングへ案内すると二人と向き合った形で座る

見れば見るほどそっくりなんだが、これで本物だった日には私は某漫画家先生に土下座でお礼と謝罪をしに行こう
さぁ、落ち着け私、まず問うところはここからだ



「なんで鍵の閉まっているはずの私の家の中にいたんですか??」

普通なら不法侵入である、一般ピープルだったら許されはしない、いや即警察である
だが、この見た目からして次元の壁を越えてきたレベルのそっくりさんだったらまぁ…いや今はそうじゃない
ひとまず二人が口を開くのを待つ

”ファイ”と名乗った金髪の髪の彼が困ったように微笑む

「えっとね、俺たちも訳が分からないままなんだよ〜…。俺たちもね、”侑子さん”って人から言われてここでしばらくは君と一緒に住むことになったんだよ〜。」

答えになっていないんですけど、と突っ込む間もない 

「ごちゃごちゃ言われても俺らは知らねーんだよ。勝手はしねーよにするからひとまず俺らのことは空気だと思って普段通りに生活してろ、こっちは好きにやる」
困ったような表情でも浮かべたのだろうか
黒鋼さんと名乗った彼は少しぶっきらぼうにそう言いきった


「いや、好きにやるって言われましてもここ私の家ですよ…」

そう呟いた私に目の前の青年たちは少しだけ困ったような表情になる


そして、私も同時に一番聞きたかったことを聞いてみようと思い口を開いた


「あなた方は、もしかして魔術師さんと剣士、さんのファイさんと黒鋼さんです、か…?」

そう尋ねた瞬間わずかに彼らのまとう空気が変わる
あー、なるほどこれはあの擬音語でしか表せないなぁ…とのんきにそんなことをぼんやりと考えていた私

二人はわずかに警戒しながらも口を開く

「どこで聞いたんだ、てめぇ…」
「黒様落ち着いて、けどほんとに、どこで聞いたのかな〜?」

彼らのまとう雰囲気、話口調

私がつい先ほど呟いた、黒ファイそれぞれの性格そっくり

こんなそっくりさんなんて無理だ絶対

しかも侑子さん出てきてる

「…次元の壁くらいは簡単に越えられる、ってことですよねー…侑子さんならあり得るよ、うん…私対価払った覚えないんだけど…」

「…君、侑子さんを知っているのかい?」
二人を見つめながらぼんやりとそう口を開いた私の言葉にファイが反応する

私がうなずいて見せると二人の緊張がわずかにほどけたのだろうか
まぁ、最も知っているといってもあくまで紙面上のことでしかないのだが、ひとまずはそれは置いておこう

状況をおさらいする

帰宅したらまさかのモノホン黒ファイが家に鎮座
どうやらしばらくは口調からして一緒に暮らす???
その場合私家主

黒ファイと同居
つまり、公式黒ファイ見たい放題
しかも私家主
私の言うことぜったーい

黒ファイに好きな事させてもok…?



「よし、一緒に住もう」
結論、黒ファイに好きなことさせられるなら何でもいいや(おい
「「え」」
二人が驚いたように私の顔を見つめる
こうやってみると本当にきれいですよね、お二方
「ほら早く寝る準備、ベッドは私が使ってるのあげるね、部屋から移動できないからそこだけは許してね、最悪君たちの力使って移動してもいいよ」

とんとんと話を進めていく私に目を白黒させながらも二人はうなずく

「後、これは絶対だけど私が帰ってきたらいちゃつきながら出迎えてね」

「え」
その言葉を二人に向けて笑顔で言った瞬間、ファイさんの隣にいた黒鋼さんの目から何か信号
おそらくよくやった…!の類かと
黒鋼さん頬ゆるんでますよ、イケメンなお顔見せるのはファイさんだけですよ、じゃないと嫉妬しちゃうよファイさんが

おっと一方びっくりしたまま口を開けて呆けるファイさんに私は笑顔を浮かべて言い切る

「私、腐ってるの。君たちが二人でいちゃついてるの見るのが一番のごはんで活動元なの」

それを聞いて二人はそれぞれの顔を見てから私の顔を再び見る

なんと言われようが知ったこっちゃない

私は笑顔を浮かべたたまま続ける

「君たちはしばらく侑子さんの言いつけを守ってここに私と住まなきゃいけないんだよね?ということは私が家主なんだから当然私の家に住む分だけ働いてもらわなきゃいけない。けど、そんなことしてもらうよりももっと、私のためになることがある。それがさっきの提案。できないならまぁ、仕方ないけどベランダで野宿まがいになるけど…寒いし狭いよー」

そういって二人を見る

二人はこまったように顔を見合わせていた


やがてファイと黒鋼は分かった、とでもいうようにうなずいた
私の心の中のひそかなガッツポーズは放っておいて

というわけで同居生活始まります








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