04 倒されたモンスターは断末魔をあげる暇すら与えられず、自身を貫いた岩が消えたあとにぼとりと、残骸といくつかのレンズを地面に残すだけになる。 「な……」 レイスは突然の事態に言葉を無くし、アメジストの少年、リオンを見る。 リオンは眉を寄せると、剣を鞘にしまいレイスに数歩近づいた。 足を動かす度にそこら中に転がったレンズが当たり、じゃらじゃらと音をたてる。 「この辺りにいたモンスターを倒したのはお前か」 「は?……あ、あぁ」 地面に座り込んでしまっていたレイスは立ち上がり、その質問に応える。 急な質問に一瞬戸惑うが、この少年は恐らく、やけに大量にいたモンスターのことを言っているのだろうと察しがついた。 「それにしても…、助けてくれて有難う、死ぬところだったよ」 「ふん、目の前で殺されるのは気分が悪かっただけだ」 ようやく落ち着いてきたレイスは、目前の少年へ例を述べる。声の調子等からして、さっき自分に声を掛けてくれたのは彼だろう、と推測した。 突如現れたあの岩もまた、恐らく。 「それでも構わないよ……あ、俺はレイス。レイス・グランシアだ」 「リオン・マグナス。――お前はレンズハンターか何か?」 「は?なんで……」 二度目になるリオンの唐突な問いに、レイスは首を傾けようとしたところで、リオンがこの地面に有る大量のレンズを言っているのだと理解した。 「いや、違うよ。確かに換金はするけどな…。ところで……、リオンか。リオンは何でこんなところに?」 「話す義理は無い」 ぴしゃりと切られた会話に、彼に命を救われた身ながらさすがにカチンと来る。 レイスは彼が出す問い答えているのだから尚更に。 「……なんなんだよ、俺は答えてるのに……」 レイスはもう一度落ちついてリオンを眺める。 華奢な体躯、背は少しだけ自分より低いようで、目線をあわせるにはほんのすこし下を向く形になる。 顔つきは非常に整っていて、中性的。 レイスとは違った意味で性別を間違えそうな容姿だった。 (……それにしても、すごい綺麗な奴だな) 「何だ」 「イヤ別に。――なぁ、リオンがここにいたのは、どうせお国かなんかの仕事なんだろ?」 「……」 目を細めてこちらを探るような目付きをしてきたため、大方推測は当たっていたのだろう。 流石に、国の…というのは発言した本人であるレイスも行きすぎたかと思っていたが、案外当たっていたらしい。 「服とかを見ればわかるよ。一般人や冒険者、レンズハンターなんかにはとても見えないしな。けど軍の服でもないし――特例か何かの剣士なんじゃないか?」 リオンの服装は淡い桃色のマントに鮮やかな青のジャケット、白のズボン。 しかもどれも一目見て作りが良いものだと見て取れた。 レンズハンターなら服にここまで気を使うものは多くはないだろうし、ソロの冒険者にしてはあまりに軽装だった。 「……セインガルド王国客員剣士だ。ここにはモンスター討伐の任を受けてきた」 「王国客員剣士!へぇ、すごいんだな……」 面倒そうに口を開くリオン。 しかしレイスは返答を得られたこと自体に満足したのか、リオンの話を半分に、彼から興を削がれたように彼が手にしている鞘に仕舞われた剣を凝視し始めた。 薄く水色を帯びたようにきらめく白金色の柄。今は隠れている刀身も同じ色なのをレイスは今しがたの戦闘で目にしていた。半球になった鍔の部分には美しい模様が浮き彫りで刻まれている。 「なあ、その剣さ、ソーディアンなんだろ?」 赤霞の瞳を輝かせ、レイスはリオンに問うた。 ← → |