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第十二夜





ここ最近いたりいなかったりが頻発していた錐生零が、また最近風紀委員の仕事をやるようになっていた。

夜間部登校時刻、校舎まで莉磨や支葵と向かいながら、珱は気づかれない程度に零に視線を向けていた。



『…』

「珱、さっさと来ないとおいてくわよ」



莉磨に呼ばれ珱は歩く事に専念するが、ぼんやりと頭に蘇るのは数年前の出来事。



ーーーー



『…どうぞ、枢様』



肩までしかない蜂蜜のような色合いをした髪が今よりも幼い顔立ちに靡く。機から見れば邪魔そうに見えるが珱は気にした様子なく後ろへと振り向く。



「悪いね、いつもいつも…」



申し訳無さそうに笑いながら言った枢に珱は別に、と短く答える。

走っていた足を止め、二人が着地した先には家が一軒。大慌てで枢がその家に向かうのを木の上に座り込んで見届ける。

……枢様は、一週間ほど前に人間の少女をレベル:Eから助けた。あの家には、黒主灰閻と共にその少女が住んでいる。



『(名前は…何だったかな…)』



確か聞いたが、興味がなく忘れてしまった。これから先、出会うことなどないとこの時珱は思っていたのだ。



「あはははははは…!!」

『!』



いきなり家から枢の大爆笑する笑い声が聞こえてきて何事かとぎょっとなる。



『(…枢様が…弟の前以外で爆笑するの初めて見た……いや聞いたか)』



少しばかりつまらないという用に膝を抱え込むが、まぁいいかと目を閉じる。

しばらくして出てきた枢に気づき、木から雪の地面に埋もれないようふわりと着地する。



「待たせてごめんね…一緒に中まで入ればいいのに」

『いえ…人間の少女は吸血鬼を恐がっていると聞いていたので』

「ああ…次からは大丈夫だよ、きっと…」



どこか嬉しげに呟いた枢に珱は不思議そうに見ていた。

それからも、度々枢様を監視の目から欺く為に一緒に黒主優姫(覚えた)の家の前まで向かった。時々灰閻さんが出て来て中まで誘うが、私は断固として拒否していた。



『(見たくなかった…)』



枢様が、人間の子供に向ける、私が知らない顔なんて…。そのうち枢様と一緒にあの子の家に向かうことは無くなったが、その数年後、血に染まった牙が蝕んだ。



『ーーーー…錐生家が、純血種に襲われた……?』



聞かされた言葉は、思いの外に衝撃だった。



next.

  



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