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7


夏目達を見失ったスミエだったが、少しずつ夏目達への距離を縮めつつあった。



「臭うぞ臭うぞ、この部屋か。ふふ、食ってやる。人間共め、全員食ってやるぞ」



嗅ぎあてた部屋の襖をスミエはそっと滑らせた。

ーーーーひらり.

戸に挟まっていた連なる紙人形が、スミエを捕らえるように円を描く。紙人形を操る名取の後ろには、陣の真ん中で杖をつく雪野と、壺を構える夏目がいた。

ーーーーぐいっ.



「ふふ」



ーーーーひゅる…



「ちっ」

「!すり抜けた…」



はっと雪野は顔を上げた。紙人形を避けたスミエが、雪野へと標的を定めた。

ーーーーバッ.



『!』



名取が庇うように雪野の前に出た時だった。

ーーーーがしっ.



「ぎゃ」

「鈴木殿に危害を加えることは許さんぞ」

『!?』



突然現れた妖にも驚くが、こちらに好意的な様子に戸惑いを見せる。



「探しましたぞ鈴木殿。お忘れか?私のために橋を架けて頂いた」



三つの目を細めて笑う妖に、はっと雪野は思い出す。雨上がりに見つけた、小人たちが担ぐ御輿の中身を。



「こやつは私が連れ行き清めましょう」



スミエの頭を鷲掴み妖は言う。



「これで借りは返しましたぞ。さらば」

「ぎぁ…」



ーーーーゴッ.



「「『!』」」



妖がスミエを連れて姿を消した直後、室内に吹き荒れた突風。咄嗟に閉じた目を開けると、室内にはぱらぱらと紙が舞っており、終わった、と認識した直後、夏目、雪野、名取はその場にぐったりと倒れ込んだ。



「…雪野、いつの間にあの妖と知りあったんだ?」

「しかもなかなかの大物だぞ」



温泉旅館妖退治も解決した翌日、夏目と斑は雪野に尋ねた。



『少し手助けしただけだよ。なんか困ってたから…まさか借りを返しに来るとは思わなかった…』

「お前はまたやたらに妖と関わりおって!夏目化してきてるぞ!」

「なんだよそれ」



なんとなく夏目はム。



「夏目、雪野」



フロントでチェックアウトしている名取を待っていると、柊が声をかけてきた。



「名取(あのひと)は封印されてるはずの妖を確認に来ただけだよ。せっかくの旅行だから、お前達と話でもしたかっただけなんだ」

「ーーーーうん。おれも話したいことがいっぱいある。いっぱいあるのに」



ーーーー名取さんにも、藤原夫妻にも。



「話したいのに、うまく出てこない。知られるのが恐いんだ。恐がられるのはなれていたのにーーーーでも、いつかきっと…」



きっと話そう。

本当の心を知ってほしい人達にーーーー…。



「お待たせ。悪かったね、またまきこんでしまって」

「いえ、本当に楽しかった。懲りずにまた、たまには会ってくれますか?」

「ーーーーああ、もちろん」



表情を柔らかくした名取に夏目は笑い、雪野は微笑んだ。



「さあ、帰ろうか」

「はい」



斑を抱えて、雪野は歩き出した夏目と名取に続こうとした足を止めた。ちらりと振り向いた旅館を名残惜しげに見ながらも、すぐに笑って二人の後を追った。





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