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3


部屋に来ていたヒナをふと見ると、窓の外をじっと見つめていた。隣に並んで見ると、庭が見える。あんまり見ていたものだから、雪野はヒナを連れて庭へとおりた。



『(すごい跳ねてる…)』



塔子が育てている花壇の周りを嬉しそうに跳ねるヒナの様子を雪野は眺める。



『ああ!ダメダメ、引っこ抜いちゃっ』



花壇から花を抜こうとしていたヒナは、止めた雪野をきょとんと見上げる。



『……花、好きなの?(いや、もしかして自然が好き?)』



一応動物の類だし…。ニコニコと笑うヒナに、少し考えた雪野は夏目と斑にピクニックを提案。情操教育も兼ねて、早速出かけることに。



「……ニャンコ先生…」

「んー?」



広々とした原っぱで楽しそうに花を摘むヒナを、夏目はまじまじと眺める。



「…デカくなってるよな、少し」

「デカくなってるな」

『うん…ヒヨコサイズがハトサイズになったよね』



ニコ、とヒナが笑うから、夏目もニコ、と笑い返した。ら、にやりと斑が笑うものだからヒナは怯えてしまった。



「そりゃでかくもなるだろうな。ばったもんといえど「竜」だからな」



ならばそのうち家よりも大きくなるのかと夏目は想像してしまう。



「そう一緒にはいられないか」

「言ったろうが。デカくなったら巣から旅立っていくのさ」

「そうだな…」



そんな会話になんとなく、雪野はヒナの頭を撫でてやった。



「ーーーーそろそろ名前をつけてやらないとと思ってたのに」

「もう私がつけたぞ。卵からかえったからタマちゃんだ」

「『え!?』」



まさかのことに仰天。



「異議あり。審議審議!!」

「あほう。こういうのは早い者勝ちだっ」



ーーーー結局、名前はタマちゃん(仮)となった。



「…タマ?」

「眠ってるぞ」

「またミルクもハムも残してるのか……」

『最近食べないね…元気もないし』

「ーーーーどうしたんだタマ」



少しずつ少しずつタマは大きくなっていたが、それから、なぜかどんどん衰弱していった。

ーーーーガラ…



『ただいま…』



学校から帰ってきた雪野は、足元を何かが過ぎった気がして顔を向けた。



「ちゅう、ちゅう」

『ぎゃあ!ネズミ!!』



入り込んだネズミに顔を青ざめて飛び退いた雪野だったが、はっとネズミの気配が変わったことに目を見張った。

ーーーーどろんっ.

ネズミがお坊さんのような格好をした人に変わった。



『!妖…!?』

「磯月のネズミと申す。我が主がご所望だ。辰未の雛は頂いてゆく」

『は、はあ!?』



クン…と、鼻を動かしたネズミ。



「上か」

『!待て…貴志君!先生!』



上へと向かったネズミに、雪野が慌てて二階に向かって叫ぶ。



「雪野?」

「む?」



その声は二階にいた夏目と斑にしっかり届いた。



「何やら妖が屋敷内に入ってきたな」

「何!?」



直後、襖の隙間からネズミが入り込んだ。



「!お前はこの前の…」

「小僧、やはりお前が隠していたのだな」



ネズミと面識があった夏目はすぐさまタマの前に出た。



「ほぉ、下賤な獣か。私の縄張りに入るとは生意気な。鼠ごときは猫じゃらしで鍛えた私のこの右フックで…」



ーーーーびたんっ.



「!!?」



斑の話など聞かずネズミが投げた札により、斑は壁へと貼り付けに。丁度雪野が駆け上がってきた。



『うわ!先生なんで張り付いてんの!?』

「…何と面妖な…豚?いやあるいは狸か」

「な、なんたる無礼!おのれ必ず喰ってやるぞネズ公っっ」

「先生時間稼ぎうまいぞ!あとはまかせた」



騒ぎに乗じて夏目はタマを抱き上げると窓から脱出。



「時間など稼いどらんぞ!」

「!待て小僧」

『貴志君!』

「待て雪野、これはずしていけ!」



追いかけようとしていた雪野は忘れてた。と斑の札を取ってやり追いかけた。





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