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7


廊下の掲示板がふと目に入った雪野は、名取が狙うあの妖の張り紙を見つけた。



『(あのカラスは大丈夫かな…)』



夏目の部屋で安静にしてある妖鳥を思い出す。そしてはっと思う。



『(なんだって心配を…いやでも大怪我だったし、助けを求めた相手を例え妖だろうと放っておくのは…)』

「名取さん」

「ん?」



口を開いた夏目の声に、複雑な心境の思考を一時雪野は中断させた。



「おれを探す時に飛ばした紙人形で、あの化物を探せませんか」

「いや、名を知らないからおそらくは無理じゃないかな…あ、待てよ?この会場には気が満ちているし、君程の力があればひょっとしたら飛ばせるかもな」

「!お願いします」



笑う夏目の珍しい様子に名取は面食らいながらも了承し、控え室へと場所を移動した。



「その陣の上に手を出して、目を閉じたら相手の姿を頭に描く。探すよう命じながらね」



名取が描いた陣の上に紙人形を置いた手のひらを差し出す。目を閉じ、言われたように妖の姿を思い浮かべて探すよう命じると、紙人形が手のひらから浮いた。



「ーーーー行け」



ーーーービュン.

夏目の手のひらから紙人形が飛び出した。

ーーーーばりんっ.



「!?」



窓ガラスを突き破り紙人形は外へ。



「わーーーーっっ。ガラスを!!」

「ごめんごめん、窓あけ忘れた」

「えっ」

「しかし初めてで成功するとは…」



しみじみと名取は呟く。



「本当は人形を追うのがいいんだけどあの早さでは………ん?」



ーーーービュッ.



「!もどって来た!?」



旋回した紙人形は夏目の隣をすり抜け館内へ。



『失敗…?』

「ーーーーいや…」

「妖力の強い人間は美味だから、喰いに来ているのかもしれんぞ」



つまり、目当ての妖はこの建物の中にーーーー…。その可能性に、すぐさま三人は紙人形を追って走り出した。



「柊」

「先に行きます」



人間よりも速い妖である柊が先に行く。夏目達も必死に追いかけるが、紙人形のスピードにはついて行けず見失う。



「くそう。ここは妖の気配が多すぎてーーーー…」



足を止めた夏目の目が、隣の大広間に向けられた。



「お、名取どうした」

「その子が新しい式かい?」



大広間で談笑していた人達が気づき声をかけるが、夏目は目もくれず何かに集中している様子。



「ーーーー夏目?」

「静かに」



ーーーー…サ……サカサカ…

微かに聞こえる音。

ーーーーカサカサカサカサ.

紙の音だ。その音を辿り、雪野は顔を上げた。



『…天井に、紙人形がーーーー…』



夏目と名取も見上げる。夏目が飛ばした紙人形は、天井に張り付いていた。考えるよりも先に、紙人形に天井からじわりと赤黒いものが染み出しはっとする。

ーーーーポタポタポタ.



「!」



ーーーー血!?



「みんなさがって…」



ミシッ、と…天井から軋む音がした直後ーーーーどおんっ!



「ふ〜〜〜〜」

「うわ、何だ…」



天井から、賞金首の妖が降ってきた。



「出たな」

「!」



妖の左目上に刺さる柊の太刀に夏目は気づく。



「うわぁ!」



暴れ出した妖を見て、夏目は襲われそうになった人々の前に出た。



「やめろ!」



ーーーーがぶっ.



「なっ…」

『貴志君!!』



庇った夏目の腕に妖が喰らいついた。



「こ…」



ーーーーゴッ.



「この!!」

「!ぎゃ、ぎゃっ」

「うわ」



妖の顔面を拳でめいいっぱい殴りつけると、怯んだ妖は広間を逃げていった。



「に、逃げたぞ」

「おい君大丈夫か」



痛みはあるが、腕はあるし怪我もない。夏目の喰われた腕は、柊が魔除け文字を書いてくれた左腕だった。



『先生!!』

「…………ちっ」



ーーーーどろんっ.



「追ってやるわアホウ」



雪野が皆まで言わずとも本来の姿に変化した斑は、すぐさま妖を追って部屋を飛び出した。



「何だ!?あのような大きな式…」

「名取、あの子は一体…あの化物を拳ひとつで追い払うとは…!!」



大騒ぎのその場を、問いに答えることなく夏目達も飛び出した。



「!名取、小僧、嬢ちゃん。追うな喰われるぞ」




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