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名取と共に夏目達は会合が開かれる会場までやって来た。
「ーーーーこんなに…?これ皆、本当に…?」
『思っていた以上に大人数なんですね、会合って』
「はは、君達にはほとんどの妖も見えてるからね」
「そうですね…」
既に会場にはたくさんの人や妖が集まっており、どれが人でどれが妖なのか、見分けもつかない状態だ。
「…おい…何だあの見かけぬ子供ら」
「…おや?あれはレイコじゃないか?夏目レイコ」
どこからかの囁き声が、夏目の耳に届いた。咄嗟に反応して振り向くも、ざわつく会場で特定に繋がりはしなかった。
『お面とか、布をつけてる人が多いですね…何か理由があるんですか?あれ』
「いや、素性を隠してるだけさあれは。そうだ。雪野ちゃんはフードをかぶってるから大丈夫だろうけど…夏目くん」
はっと夏目は振り向く。
「面を着けるかい?皆情報は欲しくて集まるが、素性を知られたくはないのもいるんでね。偽名を使うのも自由だ」
「…名取さんはいいんですか?素性かくさないで」
「隠そうとして隠せるものではないからね、このきらめきは」
「むしろ俳優のそっくさんなノリだと思われてるんじゃないのか?小力とか」
『先生に一票』
散々な言われようだが名取は気にしない。
「実は名取家は祓い人を昔生業にしていたから結構有名なんだ。いつかの頭主が嫌気がさして廃業してたが資料は色々残っていて、今は私が使わせてもらっているーーーー…よく、来てくれたね」
「…自分に出来ることを、見つけたいんです」
「ーーーー…そうか」
笑った名取の頬に、ヤモリの痣が動いてきて、思わず雪野はそれを目で追う。
「あいかわらず不気味な痣だな。恐ろしくはないのか」
『!先生』
「はは。まったく害はなく動きまわるだけだからね。もう慣れたよ。ただね、この痣」
失礼な物言いをした斑の頬を横にみにょーんと伸ばしていた雪野は顔を上げた。
「左足にはけして行かないんだ。それが気持ち悪い」
目を鋭くさせ、名取はいつもと違う笑い方をした。
「それって、どういうことですか…」
「それはね「名取」
口元だけで笑った名取が答えようとしたが、遮る声に意識が逸れる。
「新しい式をつけたっていうから見に来たよ」
着物を着た初老の女性が、人当たりの良い笑みをたたえて歩み寄ってきた。
「最近はうちの式もろくなのがいなくなってね。どこかで強力なのを捕ってこないとならない」
「七瀬さん」
「先程はうちの式達が失礼したようで。あんな小物、いつでも捨てて良いのだが」
ーーーー何だ、この女性ーーーー…。
女性の言い草に、もやりとした感情を二人は抱いた。
「相変わらずですね…的場さんもいらしているとか」
「ふふ、会長は会場をぐるっと見渡して、面白いものを見たと言ってもう帰ってしまった」
「面白いもの…ですか?」
「…名取さん?」
この女性は誰だろうか。それが伝わった名取はああ…と二人に小声で説明する。
「的場さんっていうとても有力な妖祓い人がいるんだ。七瀬さんはその秘書のようなものだ」
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