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BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
- ナノ -


7


『(幸せそうな笑顔だったな)』



斑を腕に抱え、夏目と共に帰路を歩いていると、前方に淡く光る姿を見つけた。



「ーーーーキヨ」

「もう暗い。私が夜道をてらそう」

「ーーーーキヨ、今の話…」

「聞いていたよ。大切な人を見つけたんだな。よかった、あの人はもうひとりではないんだな」



お面を外しているキヨの表情はよくわかり、よかったーーーーともう一度呟いたキヨの表情は、安心していたが儚げだった。



『ーーーーねえ、先生』



夏目とキヨの後ろをついて行きながら、雪野は腕に抱く斑に尋ねた。



『蛍達が見守った山神様と恋人は、うまくいったのかな』

「ーーーーさあな。神と違って蛍同様、人の命は短いからなぁ」



ーーーーその夜、静かな夢を見た。

それはたぶん、キヨから流れてくる記憶ーーーー…。






触れ合い、笑い合い、同じものを見て、感じていた幸せな日々ーーーー…。



「…だ。どこに行ったんだ!?出てきてくれ。隠れているのか!?ホタル!見えない、出てきてくれホタル。そばにーーーー…」



手を伸ばせば届くほどの距離にいても、彼にその姿が映ることはなかった。



「……出てきてくれ。おれのこと、嫌いになったかい?」



どれだけの季節が巡ろうと、姿も声も温もりも届かなかった。



「キ………キヨ。好キヨ。好キ。好き。好きよ」



聞いて。






好きよーーーー…。






『ーーーー…キヨ…?』



深夜。夢を見た雪野が目を覚ますと、淡い光は部屋のどこにもなかった。部屋を出て、家中を探すも見つからない。



『…貴志君、ちょっといい?』



声をかけて、そっと障子をあけて目を丸くさせる。



『(いない!?)』



布団はもぬけの殻だし、窓も少し開いている。玄関まで行くと、靴が一足なくなっていた。




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