×
「#寸止め」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


2


茂みの向こうに、広がる沼を見つけた。



「本当だ、こんな所に沼が。水もきれいじゃないか」

「…む?しかし、妙に静かだな」



くんくんと、雪野の腕に抱かれる斑は鼻を動かす。



「ーーーーそういえば…こんな森の奥で生気があまり感じられないなんて、この沼一体ーーーー…あ」



木々の隙間に、夏目は見つけた。倒れる膝から下の人間の足が、見えたのだ。



「『!?(死体!?)』」



気づいた雪野も驚愕して顔を青ざめる。

ーーーーむくっ.



「『わーーーーっっ』」

「……やあ。君たちも蛍を見に?」



突然、前触れなく起き上がった死体…かと思いきや、死体ではなく生きた人で、思わず悲鳴をあげてしまった二人は少し気まずい。



「す、すみません、大声出して…」



何だ昼寝か、と内心夏目は安堵する。



『えっと、蛍…いますか?』

「はは。蛍には時間的にも時期的にもまだ少し早いみたいだ。最近じゃ、そもそも減ったみたいだけどね」

「ありがとうございますーーーー…」



過ぎ去る男性の肩に、髪の長い女の顔が見えた。

ーーーーぞ…

不気味さに寒気を感じつつ、なんだろうかと目で追ってしまう。そして、女の顔にある面は、読めないが見慣れた筆記。



「妖か」

「ーーーーお前…」



思わず呟いた夏目の声は、妖に届いていた。



「お前達、人の子のくせに見えるのか?」

「『!!』」



男性から離れた妖の手が、夏目へと伸びた。すぐさま二人は背を向け走り出したが、妖は二人を追いかける。

ーーーーズルッ.



「!!」

『貴志君!』



後ろを気にしながら走っていたものだから、夏目は崖に気づかず足を滑らせた。

ーーーーがくんっ.



「やれやれ、あぶなっかしい人の子だ」



落ちる前に、夏目を助けたのは追いかけていた妖。助けてくれたらしい妖に、警戒心は薄れた。



「ーーーーありがとう、助かった」

「構わんさ。まぁ酒の一杯でも出してくれれば、祟りはしないさ小僧」

「(う…何てヤクザな)」




prev next