「今日は西瓜を買っておくから、楽しみにしててね」
朝食の時間、洗い物をしながら塔子は、食事をする夏目と雪野にそう言った。
「もうそんな季節ですか」
「そう、蛍の季節」
『私、蛍って見たことないんですよね』
「俺も。一度見てみたい」
「あら、ぜひ見せてあげたいけど…最近はこの辺、ほとんど見かけなくなっちゃったのよ。水が汚れてしまったのかしら」
とてとてとやってきた斑に塔子はおはよう猫ちゃんと挨拶。
「友人に穴場を聞いてきます。沢山いたら捕ってきますよ」
「ふふ、ありがとう。でもそっとしておかなくちゃ。蛍二十日に蝉三日といってね、盛りの短い事のたとえでもあるのよ」
そう言われては、捕って来ようなどと考えは消える。しかし、見つけてみたいし、連れて行けそうな場所ならば見せてあげたい。
そんな考えで、夏目や雪野は学校で蛍について友人達に尋ねたが、ここだという答えは特に聞けなかった。
「ここだここ。七つ森の入り口だ」
意外にも、二人に場所を教えてくれたのは斑だった。
「先生が蛍に詳しいなんて意外な趣味だな」
「蛍火に誘われて、狐火も集まるからな。それを喰うと美味いのだ」
「『……』」
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