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5


「とりあえず、夏目の若さんと鈴木のお嬢さんは化粧か面を。斑の旦那は獣の姿ではいけませんよ」

「む?」

「獣を連れたレイコ似の少年とミヨ似の少女の二人組が、「友人帳」を持っているらしいと噂なのです」

『噂…』

「ええ。何せ、妖にとって有名ですからね、「夏目レイコ」も「鈴木ミヨ」も」






『ねえ…ミヨさんって、どんな人なの?』

「…急になんだよ」

『押し入れ…整理してたら、日記が出てきたの…晴れてた、とか、妖にまた勝った、とか…一文だけだけど』

「妖?意味のわからん…そんなもの捨てろ」

『捨てろって、おばあちゃんの遺品だよ?』

「祖母と言っても僕は知らないし、父さんだって覚えてない。そんな、現実逃避ばかりしていた人の日記なんて気持ち悪い」








『(血縁者の私よりも…)』



妖達の方が、ずっと彼女を知っているのか…。

ほんの少し表情を暗くしながらも、雪野は受け取った面をつけて夏目達と共に会場へ。



「さあさあたんと飲んでくれ。よく集まった我が同輩達」

「紅峰、遅かったな。どこいってたんだ」

「野暮だね、化粧ですよ」

「おや、見かけぬ奴等だ」

「ああ。私の連れなんですよ」

「見ねぇ顔だな。さあさあ飲みねぇ」



目と書かれた面をつけた夏目と雪野の後ろには、肝試しの時と同じ人型に化けた猫の面をつけた斑の姿も。



「楽しそうなんで混ぜてもらうよ」

「おうおう飲みねぇ。ん?…お前達…」



くんくんと、匂いを嗅ぐ。



「ちょっと人間臭いな」

「『え…』」



ドキリと、少し身を固くする。



『えー…と…さっきまで、人里にいたから移ったかな…』

「ああ、多分そうだろう」

「主様を思い出す」

「「主様」?」

「人間びいきの主様か。家畜を襲うため人に化けた時、狐用の罠にはまってな。漁師の男に助けられて以来、人に化けてはそいつに会いに行ってたんじゃ」

「人の友人が出来たと言ってはしゃいでおった」

「力は強力だったが、ちっと頭の悪い方だったな。人と友人になれるなどと」

「そうじゃ主様はちょっと阿呆じゃった…まあ飲め」

「あ、ありがとう…」

『ねぇ、この辺で黒猫を見たモノはいない?』

「ああ、見たぞ」

「おれも」

「ほ、本当か」

「私も見たぞ、そこら辺で…」

「諸君!!」



響いた声に、意識が向けられた。



「そろそろ例のことについて話し合おうか」




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