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「…よし、行ったか…」
「おや」
突如身近で聞こえた、女性の声にはっと顔を上げる。
「そのお姿は、斑さまではありませんか…お久しゅう」
一人の女性が、姿を現した。
「お、お前は…紅峰か」
「先生の知り合いか」
「まあな」
「ふふ、いつ見てもお美しいお姿…おや、これは人の子。お食事中でしたか」
紅峰の指先が夏目の顎下へと触れる。
「私にもぜひおこぼれを…ん?この顔どこかで…」
その顔と、記憶の中の顔が一致。
「ぎゃっ、夏目レイコ!?」
「阿呆声がでかい!!」
「ぎゃっ」
仰天して顔を青ざめた紅峰を、斑が前足で踏みつけた。あまりの荒技に二人は紅峰の安否を心配していた。
「へぇ、孫ねぇ…そちらは鈴木ミヨの…しかし、ふふ。相変わらず短気なお方だ」
「紅峰、この辺で紙の束をくわえた黒くてラブリーな猫を見なかったか」
「黒くてラブリー?その猫が何か」
「いや、知らんならいい。さっきのあの妖の列は何だ」
「この森のが集まって飲み会です。ああ、そういえば、頭のデカイぶさいくな黒猫が会場へ向かうのをさっき見ました」
すぐに、夏目と雪野は黒ニャンコだと気づく。
「それだ!!紅峰さん、そこへおれ達を連れていってくれないか」
『お願いします』
「正気かい。人の子が行けば、すぐに食われてしまうよ」
「ならば妖に化けていく、お願いだ。おれ達にはどうしてもあの猫を見つけ出さないとならない、責任があるんです」
真っ直ぐに見つめる二人を、はかるように見つめる紅峰。
「生意気な目ともの言いは、確かに少し似ているか。そこが気に入っているんですか?」
「阿呆か。くだらんこと言ってると食うぞ」
「ふふ、人の子がどこまでやれるか、面白そうだ。よし、夏目の若さま、鈴木のお嬢さん。連れていってさしあげましょう。うまく妖に化けきれれば善し、もし人の子とばれることになれば、その時は皆の肴になって頂きましょう」
『ーーーーいいよ』
「頼みます」
怯えも迷いも見せず、二人は同意した。
「頑張ろうな、先生」
「お前らはまた勝手なっっ」
本来の姿から、依り代姿へと戻った斑を見た紅峰の反応。
「ぎ、ぎゃああああーーーー!?斑さまがちんちくりんにーーーーっっ」
あまりの衝撃に悲鳴を上げた。
「うううう…おいたわしい…」
「こっちか酒はー」
「酒飲みにいくんじゃないぞ」
『わかってる?先生』
ひっそりと、茂みから黒ニャンコがその様子を見つめていたが、夏目達は気づかなかった。
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