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4


「…よし、行ったか…」

「おや」



突如身近で聞こえた、女性の声にはっと顔を上げる。



「そのお姿は、斑さまではありませんか…お久しゅう」



一人の女性が、姿を現した。



「お、お前は…紅峰か」

「先生の知り合いか」

「まあな」

「ふふ、いつ見てもお美しいお姿…おや、これは人の子。お食事中でしたか」



紅峰の指先が夏目の顎下へと触れる。



「私にもぜひおこぼれを…ん?この顔どこかで…」



その顔と、記憶の中の顔が一致。



「ぎゃっ、夏目レイコ!?」

「阿呆声がでかい!!」

「ぎゃっ」



仰天して顔を青ざめた紅峰を、斑が前足で踏みつけた。あまりの荒技に二人は紅峰の安否を心配していた。



「へぇ、孫ねぇ…そちらは鈴木ミヨの…しかし、ふふ。相変わらず短気なお方だ」

「紅峰、この辺で紙の束をくわえた黒くてラブリーな猫を見なかったか」

「黒くてラブリー?その猫が何か」

「いや、知らんならいい。さっきのあの妖の列は何だ」

「この森のが集まって飲み会です。ああ、そういえば、頭のデカイぶさいくな黒猫が会場へ向かうのをさっき見ました」



すぐに、夏目と雪野は黒ニャンコだと気づく。



「それだ!!紅峰さん、そこへおれ達を連れていってくれないか」

『お願いします』

「正気かい。人の子が行けば、すぐに食われてしまうよ」

「ならば妖に化けていく、お願いだ。おれ達にはどうしてもあの猫を見つけ出さないとならない、責任があるんです」



真っ直ぐに見つめる二人を、はかるように見つめる紅峰。



「生意気な目ともの言いは、確かに少し似ているか。そこが気に入っているんですか?」

「阿呆か。くだらんこと言ってると食うぞ」

「ふふ、人の子がどこまでやれるか、面白そうだ。よし、夏目の若さま、鈴木のお嬢さん。連れていってさしあげましょう。うまく妖に化けきれれば善し、もし人の子とばれることになれば、その時は皆の肴になって頂きましょう」

『ーーーーいいよ』

「頼みます」



怯えも迷いも見せず、二人は同意した。



「頑張ろうな、先生」

「お前らはまた勝手なっっ」



本来の姿から、依り代姿へと戻った斑を見た紅峰の反応。



「ぎ、ぎゃああああーーーー!?斑さまがちんちくりんにーーーーっっ」



あまりの衝撃に悲鳴を上げた。



「うううう…おいたわしい…」

「こっちか酒はー」

「酒飲みにいくんじゃないぞ」

『わかってる?先生』



ひっそりと、茂みから黒ニャンコがその様子を見つめていたが、夏目達は気づかなかった。


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