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3


「むっ。やはりこやつ妖だな」



黒ニャンコの隣に並んだ斑が匂いを嗅ぐ。



「何だ。先生じゃなかったのか」

『紛らわしい』

「一目見ればわかるだろうが阿呆!」



しれっとした顔の二人に斑は怒鳴る。



「こんな頭でかい猫、そうそういないだろ。じゃあ先生に化けて来たってことかな、この黒ニャンコ…何の目的だろう」

「友人帳は無事だろうな」

『ん?大丈夫。ここにある…』



はっと問い質した斑に雪野が友人帳を見せた時だった。

ーーーーしゅっ.

素早い動きで友人帳を咥えて奪った黒ニャンコに、夏目、雪野、斑は硬直。

ーーーーひょっ.

軽々と、友人帳を咥えた黒ニャンコは窓の外へ。



「「『うっ、わああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!!?』」」



我に返った三人の悲鳴があがる。ガラッと、顔を青ざめた夏目が上着を引っ掴み窓を開け放つ。



「わっ。阿呆夏目ここは二階…」

『貴志くん!』



慌てて雪野と斑も夏目の後を追い、森の中へ。



「…くそ、どこ行った黒ニャンコ。こっちの方に走るのを見たのに…」

「落ちつけ夏目。暗くちゃ黒いやつは見つけられん、出直すぞ」

『でも…友人帳が…』

「この森は瘴気に満ちている。人間のお前達が夜うろつくのは危険だ」

「もう少し、もう少し探させてくれ。妖達の大切な名を預かっているんだ」



息を切らせて、焦っている夏目は周りが見えていない様子。



「くそう黒ニャン…」



ーーーーゴッ.



「……」

「まあ落ちつけ。友人帳を捕られて腹立たしいところだが」



頭突きを喰らって多少冷静に戻った夏目。



「あの黒ニャンコからは悪意的なものは流れてこなかった。だから油断したのだが…とにかく、悪用が目的ではなさそうな気配だった。下手に騒いで「友人帳」が奪われたことを他に知られるほうがマズいことになるしな」

「ーーーー…けれど……ん」



ふと、夏目は木々の向こうに見つけた。



「何だろうあの光。上のほうの山道に」

「ん?」

『…灯り?』



ふわりふわりと、一列に火の玉が。



「狐火か」

「多いな。どこへ向かっているんだ?」



茂みに隠れてこっそりと伺う。



「む」

「どうした」

「人間の匂いがするような」



行列の中の妖の言葉に、はっとした斑は元の姿に変化すると、夏目と雪野の上に覆いかぶさった。



「!先生、重い」

「がまんしろ。妖の匂いでカモフラージュしてやってるんだ」



ひそひそと小声でやり取りする。



「おっと遅れる。気のせいか…むしろこの辺はケモノ臭い」

「ケッ、ケモノ臭いだと!?高貴で偉大なこの私を…!!」

「まあまあ、ケモノ臭のおかげでやりすごせたんだし」

『怒らない怒らない』



不愉快そうにする斑を二人でなだめる。



「むかしはよく「主様」が人の匂いをつけて帰ってきておったのう」

「そうだったな、人に化けては里で遊び、美味な土産をよく分けてくれておった」

「それを…おのれ、人間どもめ…」

「人間などと関わるとろくなことがない」

「そうだ……」

「『(「主様」…?)』」



耳に届いた、妖達の会話。その声は、徐々に遠ざかって行った。




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