『ゲホッ、ゲホッ…おはようございます…』
「あらあら!雪野ちゃん、ちょっといらっしゃい」
咳き込みながらおりてきた雪野の額に塔子は手のひらを当てる。
「まあ熱い。熱があるみたいね…」
『学校…』
「何言ってるの!そんな顔真っ赤にさせて、行ったら悪化しちゃうわ。ほらほら、早くお布団に戻って」
『は、はい…ゴホッ』
風邪を引いてしまい、学校を三日に渡って休んだ雪野は部屋からほとんど出ずにいたが、その間に夏目はまたも妖相手に問題を抱えていた。
その問題も、雪野が風邪を治し復活すると解決していた。
『じゃあこれが、そのアサギの琴なの?』
「ああ」
アサギの為、アカガネという妖と共に一から造り上げた琴を夏目から借りた雪野は、軽く弦を鳴らした。
『…聞いてみたかったなー』
「いつか、きっと聞けるよ」
『うん』
もう一度音を響かせ、雪野はそのいつかを楽しみにした。
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